第13回全国クラブ大会が2006(平成18)年1月8~9日の2日間、埼玉・熊谷ラグビー場で全国8地区代表による1回戦、準決勝を、そして20日後の1月29日に秩父宮ラグビー場でタマリバ・クラブ(神奈川)対北海道バーバリアンズ(北海道)の決勝戦が行われた。その結果、タマリバが10-3で接戦を制して3連勝、4度目の優勝をとげた。
日本協会はラグビー人口の底辺拡大を目標に2003(平成15)年度の第41回日本選手権から全国クラブ大会優勝チームにも門戸を開き、タマリバ・クラブが3年連続で日本選手権出場の栄誉を獲得している。しかし、組み合わせは1回戦の対戦相手がいずれも関東大学対抗戦グループからの出場チームで、初出場の2003年は帝京大学に10-38、つづく2004、2005年度はともに早稲田と対戦。5-59、7-43の大差で敗退している。日本選手権への扉が開かれてわずか3年。さらにいえば全国クラブ大会が日本協会の主催で開催されるようになって、まだ13年と、学歴でいえば高校時代といえるだろう。日本のラグビー界にクラブ活動が根付いていくのはこれからである。
勝者の早稲田大学監督、清宮克幸が2005年度の日本選手権で、初めてタマリバ・クラブと対戦した直後の報道陣に「クラブチームが日本選手権に出場する意義はあると思うか」と聞かれて答えている。「4年前、大学と社会人との差は大きく日本選手権に大学チームは出なくていいと言われた。しかし、この4年間で差は縮まってきた。同じことが今のクラブにも言える。この先、クラブチームが実力をつけてくる可能性があるとすれば、否定すべきではない」―と。(日本協会機関誌2005年4月号から)
同じように敗者タマリバ・クラブのチームディレクター中竹竜二(今年度から母校の早稲田大学ラグビー部監督に就任)も報道陣から「トップリーグより弱い『クラブ』が、いわば特別枠で日本選手権に出場する意味があると思うか」という厳しい質問に「それは違う」と即座に否定。つづいて「…大学卒業後、あえて強いラグビー部のある企業に入らず、普通のサラリーマンをやりながら、強さを求めるための仕掛けとしてタマリバという『クラブ』をつくった。クラブだから仕方がない…という『環境』を言い訳にはしない。これがクラブチームの鉄則だと思う。平日は仕事に打ち込みながらも、休日にはラグビーで狂う。今日は負けてしまったが、全国のクラブチームの先兵の役割は果たせたと思う」(日本協会機関誌から)と答えている。
中竹竜二が率いたタマリバ・クラブの後ろには全国1200チーム、3万3000人のラガーマンが控えている。競技力という点では確かに学校チームや企業チームの後塵を拝しているのが現状ではあるが、日本選手権への出場は「クラブチームの在り方、競技力、運営カ、組織力の強化、そして何より選手たちの大会に対する意識が劇的に変化した」との見方がある。しかも、プラス思考としては、まだクラブ化をなしえていない同好会チームの存在である。すでにクラブ委員会ではこれら旧来型の同好会をどうクラブ型のチームに転換していくか、今後の課題にあげているが、考えようによれば同好会の存在はクラブ委員会にとって、潜在的な予備軍ともいえるだろう。それはともかく、2003(平成15)年度にはタマリバ・クラブから松涛誠之が三地域対抗の関東代表に選ばれているが、クラブチームからの協会代表チーム入りとしては、かつてイワサキ・クラブ(現ピッグノーズ)のピーター・フィニモアがセレクションマッチに呼ばれたことがあるが、代表選手としては松涛誠之が史上初めて。また同じタマリバ・クラブの西澤周二が2005(平成17)年度の関東代表候補に選ばれたが、日本選手権での打倒早稲田に集中するためセレクションマッチ出場を辞退している。クラブラグビーの代表が日本選手権の出場枠に加えられてからまだ3年。すでに3人の選手が、地域協会の代表、あるいは代表候補に指名されていることを考えれば、日本のラグビー界におけるクラブチームの特殊性を踏まえたうえで、じっくり時間をかけて育てていくべきだろう。
全国クラブ大会優勝チームとしてタマリバクラブの主将有水剛司が、初めて経験した日本選手権での試合後に語っている。「…ラグビーは、一昔前の大学がリードしていた時代から、社会人と大学がリードする時代になり、そして今、また新たな枠組みを作っていかなければ、昨今のラグビー人気の低迷に歯止めをかけることは出来ないと思います。そういう意味で、クラブラグビーに課せられた役割は重いです。ラグビーの強さを求めることと、楽しさを広めることのの二兎を追うことが、クラブラグビー究極の課題ではないでしょうか」―と。
日本ラグビーの歩みを振り返りながら、21世紀の未来に目を転じるとき、透けて見えてくるのは日本協会を支えるのは、オープン化(トップリーグ系)とアマチュア(学校、クラブ系)の両輪ということになる。その意味でクラブラグビーの育成に目を向けた日本協会の今後が注目される。