Ⅱ 日本代表強化新体制


 日本代表の強化体制にも新しい動きがあった。それは、外国人ヘッド・コーチの採用である。
 外国人のコーチは、1996年度日本代表、山本厳監督時代にもエディー・ジョーンズ(FW)、グレン・エラ(BK)コーチという体制。そして、2003年ワールドカップでの向井昭吾監督時代にも、マーク・ベル(FW)、マーク・エラ(BK)、ガリー・ワレス(フィットネス)コーチという体制があった。
 その後、2005年には、太田治GM(ジェネラル・マネージャー)とともに、フランス人のジャン・ピエール・エリサルド氏をヘッド・コーチ(実質上の監督)に採用することを決定した。
 日本協会は2006(平成18)年9月29日、日本代表ヘッドコーチ(HC)、ジャン・ピエール・エリサルド(フランス)との契約を解除し、後任のHCに太田治ゼネラルマネジャー(GM)をあてる日本代表チームトップの兼任人事を発表した。契約解除の理由は、日本協会と事前の話し合いがないまま、エリサルド前HCがフランス1部リーグアビロン・バイヨンヌのスポーツマネジャーに就任したことであった。日本代表の指導体制としては、とりあえず太田治GMのHC兼任と、現行スタッフの継続で、11月下旬に迫ったスリランカでの第6回RWC2007アジア地区最終予選突破を目指すが、これはあくまでも暫定措置。後任HCの人選については「8強会議の意見も聞きながら早急に決めたい」(真下昇日本協会副会長・専務理事)としている。
 日本協会は2006年9月29日に行ったプレスカンファレンスの冒頭で、ジャン・ピエール・エリサルドの突然の退任を「解任ではなく契約解除」と発表。その理由として、契約書に兼職を規制する「日本代表HC専任」の条項がないことを明らかにした。日本代表チームがオープン化して3人目の指導者。それも二人の日本人前任者に対してエリサルドHCは外国人(フランス人)。契約書に「専任」の項目がなかったことは、法律的には日本側のミスになるのかもしれないが、同時にナショナルチームの監督が二つの国の要職を兼務するという例は、RWC出場国レベルでは皆無といえるのではないだろうか。いずれにしてもイングランド代表チーム監督クライブ・ウッドワードに、2003年のW杯優勝の功績を称えて、エリザベス女王から「サー」の称号が贈られる時代である。イングランドにかぎらずナショナルチームの監督という立場は、社会的にも栄誉と責任が背中合わせの重職である。同時に選ばれたラガーマンにだけ与えられる地位である点を考えるとき、エリサルドHCの二つの国にまたがる兼職問題は、日本協会にとっても想定外の出来事だったともいえるだろう。ナショナルチームの監督に対する世界ラグビー界の通念である。
 日本ラグビー協会理事会は10月25日、元NZ代表オールブラックスのジョン・カーワン招聘を、日本代表チーム・ヘッドコーチ(HC)就任を前提としたチームアドバイザーとして迎えることを決定、報道各社に発表した。カーワン・アドバイザーのHC正式就任はNECとのチームアドバイザー契約が終る2007年1月。それまでは太田治GMがすでに発表通りHCを兼任する。
 今回のHC選考にあたっては①日本代表がラグビー・ワールドカップ2007で2勝を達成するための明確なビジョンを持っていること②日本代表強化の中・長期的プランを持ち、かつそれを明確に示せること③日本代表活動期間中は日本に居住可能なこと④日本の文化・習慣を理解していること⑤世界レベルの指導経験を持っていること──の各点に照らして人選。その結果、NZオークランド・ブルーズのマネージャー、アシスタントコーチはじめイタリア代表チーム監督の経験者でもあるカーワンが選ばれた。キャップ65、WTBとして35トライの個人記録を持っている。NZのオークランド生まれで、41歳。