何も土台がない中で、土台を作りながら強化をしてきた男女7人制代表は、2015年、ともに五輪の出場権を獲得した。
女子は、目標達成のために、緻密な準備をもって計画を進めてきたが、選手・スタッフともに五輪を特別視し過ぎたように感じた。
選手に、各自の10のパフォーマンスを発揮させるなければならなかったが、コンディション面が、結果として大きな課題となって残った。14名の五輪選手の内、ベストコンディションで大会に臨めたのは、1名のみだった。
また五輪切符を勝ち取るためにチームの強化の中心に据えてきたハードなトレーニングも、大会までのピーキングとのバランスに苦労した。スキル面でも、ゲーム開始時の「キックオフ」を制することができず、大会初戦のファーストプレーから受けに回り、五輪は10位で終えることとなった。
男子も、リオ五輪の出場権を獲得した2015年12月から、最大の目標であるオリンピックでメダル獲得に向けて周到な準備を行った。コンディショニングに関しては五輪期間にピークを合わせられるように五輪本番までの5つの国際大会でピーキングに関するシミュレーションを実施した。
具体的には大会2週間前までは試合よりも強度が高く、運動量の多い練習を繰り返しながらスキルと体力レベルを向上させ、大会前の2週間は、今まで積み上げてきたGPSデータや経験をもとに、選手が最も力を発揮できる理想のトレーニング量に調節して大会に臨んだ。
大会間にもプラニングを行い、各大会での結果や選手の感覚をさらに次の大会に反映させながら最適なピーキングを追求した。
また試合のウォーミングアップや試合後のリカバリーのルーティンも細かくコントロールし、ベストなパフォーマンスを発揮できるように努めた。このようなコンディショニングの調整が少しずつ結果に現れ始め、リオ五輪までに行われた国際大会では、国際大会で過去最高のベスト6にまで到達できた。この結果は、チームにとって大きな自信となった。
戦術に関しても周到な準備を行った。予選ラウンドで対戦するニュージーランド、ケニア、グレートブリテンに対して、日本が、最も主導権を握ることができるゲームのテンポを其々設定し、そのテンポをコントロールするためにキックオフの位置、ボールの動かし方、セットプレーのオプション、ディフェンスの方法など、使うエリアや順番にまで細かくこだわり、常に相手と状況を想定した試合や練習を繰り返し行った。
7人制ラグビーでは初めて経験するオリンピックであったため、オリンピックで結果を残している国内の競技者や競技団体からの様々な情報も取り入れるなど、できる限りの準備をしてオリンピックに臨むことができた。この準備こそが、金メダル候補のニュージーランドを破り、トップ4という成果につながった。