この全国高校選抜ラグビー大会(以下選抜大会)開催への準備には多くの時間が費やされてきました。昭和58年3月に毎日新聞社より(財)日本ラグビーフットボール協会(以下日本協会)に選抜大会開催の要望が出され、日本協会より全国高体連ラグビー専門部に検討の要請がありました。昭和58年10月の全国高体連ラグビー専門部委員長会議(以下全国委員長会議)で初めて選抜大会開催が議題となりました。その後の全国委員長会議でも何度も慎重審議されました。途中、埼玉県営熊谷ラグビー場(以下熊谷ラグビー場)建設予定地から土器が出土し、文化財埋蔵保護法の対象となり、建設工事中断に伴い2年間の審議の中断もありました。熊谷ラグビー場建設再開を受け審議も再開されましたが、平成元年12月の全国委員長会議で審議された結果、選抜大会開催についての審議はしばらく凍結することになりました。
一方、熊谷ラグビー場は平成2年12月に完成し、翌平成3年3月に全早明戦でこけら落としされました。平成4年3月にさいたま高校招待ラグビー大会が開催され、翌平成5年3月には第1回東日本高校選抜ラグビー大会が開催されました。平成10年3月の第5回大会では、関東協会長が西日本から6校を招待し、第5回東日本高校選抜・関東協会長招待ラグビー大会として開催されました。それを足掛かりに、平成10年9月の全国委員長会議で全国高校選抜ラグビー大会開催が承認され、平成12年4月に第1回選抜大会が開催される運びとなりました。選抜大会開催実現には毎日新聞社の開催要望から17年という長い歳月が流れていました。
第1回大会は16校参加で8校ずつの2ブロックでのトーナメント制で実施されました。優勝校が2校出る大会となりましたが、何とか開催まで辿り着くことができました。第2回大会は16校によるトーナメント制で実施されました。第5回大会より24校が参加となり、第8回大会からは26校の参加となりました。第10回大会からは32校の参加となり、20分ハーフではありますが予選リーグが導入されました。第12回大会は東日本大震災の影響及び諸般の状況をふまえ開催中止となりました。第13回大会より30分ハーフの予選リーグが実施され現在に至っています。第15回大会からは全国高等学校体育連盟の共催事業となりました。このように一歩一歩ではありますが、進化を続けてきた大会であります。
この選抜大会は、様々な工夫がされています。第1回大会から敗者戦を取り入れ、第10回大会からは予選リーグ制を導入しました。これは新チーム結成後間もないこの時期に、ハイレベルの試合を多く経験してほしい、競技力向上に繋げてほしいという思いから実現したものです。また、地元に強豪校が多く、実力がありながら全国規模の大会に出場できない学校にチャンスを与えるという趣旨で設けられた「チャレンジ枠」や「実行委員会推薦枠」はまさに選抜大会ならではのシステムです。公立の伝統校が選出されることが多く、その戦いぶりは多くのOBやオールドファンに注目されています。昨今では「実行委員会推薦枠」で選抜大会に初出場した学校が、これを期に実力を付け、全国高校ラグビー大会(花園大会)に出場することも見られるようになりました。大変喜ばしいことであり、多くの学校がこの選抜大会を通じて飛躍してほしいと考えております。
第20回大会、人間で言えば成人を迎えた大会となりました。更に回数を重ねるたびに成熟し、より魅力ある大会に発展していくことを、ご祈念申し上げます。
(全国高等学校体育連盟ラグビーフットボール専門部 副部長 石井泰三)
優勝 | 得点 | 準優勝 | 場所 | ||
第1回 | Aブロック | 埼玉工業大学深谷高等学校 | 41-33 | 國學院大學久我山高等学校 | 熊谷 |
Bブロック | 仙台育英学園高等学校 | 24-9 | 桐蔭学園高等学校 | 熊谷 | |
第2回 | 啓光学園高等学校 | 32-26 | 東福岡高等学校 | 熊谷 | |
第3回 | 大阪工業大学高等学校 | 52-31 | 佐賀工業高等学校 | 熊谷 | |
第4回 | 正智深谷高等学校 | 31-18 | 佐賀工業高等学校 | 熊谷 | |
第5回 | 天理高等学校 | 41-12 | 深谷高等学校 | 熊谷 | |
第6回 | 啓光学園高等学校 | 24-10 | 東海大仰星高等学校 | 熊谷 | |
第7回 | 東海大仰星高等学校 | 31-15 | 東福岡高等学校 | 熊谷 | |
第8回 | 伏見工業高等学校 | 17-12 | 桐蔭学園高等学校 | 熊谷 | |
第9回 | 常翔啓光学園高等学校 | 36-21 | 御所工業・実業高等学校 | 熊谷 | |
第10回 | 東福岡高等学校 | 61-17 | 常翔学園高等学校 | 熊谷 | |
第11回 | 東福岡高等学校 | 31-24 | 大阪朝鮮高級学校 | 熊谷 | |
第12回 | 東日本大震災の影響及び諸般の状況をふまえ開催中止 | ||||
第13回 | 東福岡高等学校 | 24-22 | 石見智翠館高等学校 | 熊谷 | |
第14回 | 大阪桐蔭高等学校 | 33-14 | 東海大仰星高等学校 | 熊谷 | |
第15回 | 東福岡高等学校 | 62-10 | 桐蔭学園高等学校 | 熊谷 | |
第16回 | 東海大仰星高等学校 | 21-0 | 大坂桐蔭高等学校 | 熊谷 | |
第17回 | 東福岡高等学校 | 33-17 | 桐蔭学園高等学校 | 熊谷 | |
第18回 | 桐蔭学園高等学校 | 42-12 | 京都成章高等学校 | 熊谷 | |
第19回 | 桐蔭学園高等学校 | 46-26 | 大阪桐蔭高等学校 | 熊谷 | |
第20回 | 桐蔭学園高等学校 | 29-19 | 御所実業高等学校 | 熊谷 |