RWC統計データからルール改正の評価


 RWC試合全体の統計データを表-2に示す。
表-2 RWC統計データ(2003/2011比較表)
評価項目20032011変化
平均得点/試合5947▲20%
トライ数/試合6.95.5▲20%
PG/試合4.33.6▲16%
DG/試合0.50.4▲20%
ラインアウトからのトライ26%36%+39%
スクラムからのトライ27%20%▲26%
ボールインプレー割合42%44%+2%
 パス数241262+9%
 ラック&モール数136162+19%
 キック数5241▲21%
 ラインアウト数3324▲27%
 スクラム数2117▲19%
 反則数2421▲13%
イエローカード2818▲36%
レッドカード020→2枚

(1)2003年RWCと2011年RWC比較
1)試合全体
■増加
ラインアウトからのトライ(+39%)
■減少
1試合当たりの得点(▲20%)トライ数(▲20%)、PG数(▲16%)
2)プレー
■増加
パス(9%)、ラック&モール数(+19%)
■減少
キック数(▲21%)、ラインアウト(▲27%)、スクラム数(▲19%)、反則数(▲13%)
3)その他
■増加
レッドカード(0→2枚)
■減少
イエローカード(▲36%)
(2)ルール改正との関係
項目変化ルール改正との関係
ラインアウトからのトライ数+39%ラインアウト内移動の緩和、リフティング認可、ジャンパーの空中での衝突防止の強化により、ラインアウト獲得率の向上
ラック&モール数+19%タックルエリアへの参加(ゲート)、アシストタックラーのホールディング等ブレークダウンで攻撃側が有利となるため、ラック&モール数が多くなる。
レッドカード0→2枚危険なタックル等不正なプレーに対する安全強化による

(3)プレーの継続、停滞防止に関する評価
 図-1は、ボールインプレー時間を示す。
 ボールインプレーは、20年で、31%→44%と約40%も長くなってきている。スクラム及びラインアウトのセットプレーが減少し、モール・ラックの停滞時間の短縮等がボールインプレー時間の延長に寄与している。
写真・図表"
図-1 ボールインプレー割合

 このデータを見る上では、ラグビーが見ていて面白いスポーツ、つまりボールゲームとしてボールが良く動き、トライが沢山生まれる等観客が楽しめる、エンターテインメント性を少しづつ改善されていることがわかる。
(4)反則の傾向
 表-3と図-2は、2007年/2011年RWCの反則の割合を比較したものである。
表-3 反則の比率と変化
反則種別20072011変化
ラック&タックル40%48%8%
オフサイド22%16%-6%
スクラム12%22%10%
危険なタックル8%3%-5%
モール3%2%-1%
その他3%2%-1%

写真・図表"
図-2 反則比率の比較グラフ

 ラック&タックルでのコンテストによる反則はやや増加し、オフサイドはやや減少する半面、スクラムの反則が多くなっている。
 また、危険なタックルは、反則の強化に伴い、大きく減少している。
 プレースタイルの変化が反則の割合に関係していることがわかる。
(5)スクラムに関する評価
 表-4は2011RWCでのスクラムリセット及び反則の集計結果である。
表-4 対戦レベル毎のスクラムリセット及び反則の回数
(100回のスクラムに対して)
対戦スクラムリセット反則(PK/FK)
Teir1vsTier131%41%
Teir1vsTier217%29%
Teir2vsTier29%17%

 Teir1チーム同士のスクラムリセットや反則の割合が非常に高くなっている。スクラムのリセットは、ボールインプレー時間の延長を妨げ、かつフロントローのけが等のリスクが発生し、安全が損なわれる。また、反則により、PG等により、直接得点に結びつく可能性がある。2012年のスクラムに関する試験実施ルールで、3段階のスクラム形成シーケンスに変更して、衝突の軽減及びスクラムを形成してから押し合うことを実行しており、今後とも継続した取り組みが必要である。