ラグビーはコンタクトを伴うスポーツでありそれゆえ他競技に比べ多くの外傷・障害が報告されている。この事実からWR(
ワールドラグビー以後WR)では彼らの制定した「ラグビー憲章」のなかの「競技規則制定の原則」において「安全性が保障されなければならない」と強調している。また「Rugby Ready」には「身体接触を伴うスポーツであるラグビーでは、すべての参加者の安全が最重要であり、関係者全員がその責任を負っている」と書かれている。つまりラグビー競技においてはすべてに優先されて「安全」があると認識しても間違いない。換言すれば、われわれ関係者は外傷や障害からいかにプレイヤーを守ってあげるかを常に考慮しなければならない立場にある、ということでもある。この考えに立脚して
日本協会としての安全対策に対する諸活動はこの10年間で様々な取り組みを行ってきた。平成17年10月各委員会にまたがる横断的組織「重症事故撲滅プロジェクト(通称インテグレイト・プロジェクト)」を立ち上げ、①スクラムトレーニングマニュアルDVDの作成②各講習会でのタックル、スクラム指導③スキルアップ講習会④「夏合宿を前に」等の通達文作成送付⑤高校チーム指導者の実態調査等の活動を行った。
このプロジェクトの活動は多角的かつ有機的に行われたが、さらに効果的な対策を講じる必要性を再認識し、
日本協会は「重傷事故撲滅」「安全なラグビーの普及・徹底」を最高のミッションとして掲げ平成19年10月「重症事故対策本部」を発足させ、平成20年「安全推進本部」と改名し活動を強化させながら継続してきた。
安全推進本部は専任の事務職員を配置し本格的な活動をスタートさせた。「インテグレイトプロジェクト」での活動内容を踏襲しつつ新たに本部内に重傷事故分析班を設置した。そこで重症事故に至った要因を詳細に分析し、その結果から導き出された問題となる技術やトレーニング法を検討し、重症事故撲滅キャンペーン用のDVD制作につなげた。特筆すべきは、平成20年1月にはこのDVDを使って安全対策委員会、医事委員会等と連携協力し、初めて全国から各都道府県安全対策委員長、医務委員長、コーチトレーナーが一堂に会し安全推進講習会を実施。登録チーム減少の危惧の中、あえてチーム登録のための義務講習として、(その内容をグランドレベルまで落とし込むために)指導責任者を対象に各都道府県単位で複数回、安全推進講習会を実施した。これにより未受講のチームについてはチーム登録ができないような対応をとった結果、全国にわたりほとんどのチームの指導者が受講した。