HIAは前述したようにWRが脳振盪国際会議の内容を基に定めた脳振盪に対する実践的対応方法で、
・多角的(症状、認識力、バランスという三つの)視点から選手をチェックすること、
・一過性、変動性、遅発性といった多彩な臨床経過をとる脳振盪に対応出来るように三回のタイミング(HIA1,2,3)で脳振盪を判定(判断)すること
即ち、三つの視点で三回のチェックというのが特徴である。
HIA1はセクション1と2から成り、セクション1はフィールド内、セクション2はHIAルーム(フィールド外)で行われる。
HIA2、HIA3はそれぞれ受傷後3時間以内、36時間から48時間以内に行われる。
以下にHIAの実際について述べる。
全体の流れはフローチャート(図1)を参照されたい。
HIA1セクション1は脳振盪、脳振盪の疑いの選手に対しフィールド内でチームドクターによって行われる。HIAの実施を要請できるのはレフリー、マッチドクター、チームメディカルスタッフである。表2に挙げた11の徴候が認められた場合にはその場で脳振盪と判定されて競技の継続は認められず、HIA1セクション2を行う必要はない。HIA1セクション1が陰性でも表3に挙げた状況が認められた場合には選手を一時退出させてフィールド外(HIAルーム)でHIA1セクション2を実施する。
1.明らかな意識消失 |
2.痙攣 |
3.強直姿勢 |
4.意識消失の疑い |
5.バランス障害/失調 |
6.時間や場所、人を特定できない |
7.明らかにぼうっとしている |
8.明らかに混乱している |
9.明らかに行動が変化している |
10.自発眼振などの眼徴候 |
11.脳振盪の徴候または症状がフィールドで同定される |
*頭部への衝撃が加わった場面があるが、直後に明らかな診断がつかない場合 |
*行動が変わってしまった可能性がある |
*混乱している可能性がある |
*脳振盪を起こしえるような外傷場面が目撃された場合 |
*脳振盪が疑われるその他の徴候と症状がある場合 |
HIA1セクション2で行われる内容を表4に示した。ここに挙げた症状、記憶、バランスをチェックするのに与えられる時間は10分間で、この間は一時交代選手の出場が認められる。
HIA1セクション2が陰性の場合には競技の続行が可能である。しかし、HIA1セクション2が陽性あるいは、評価に10分以上を要した場合には当該選手は脳振盪の疑いと判定され競技続行は認められず、一時交代選手は正式な負傷交代選手となる。
HIA1の評価を受けた選手はその結果にかかわらずHIA2、HIA3を受けなければならない。
HIA2はSports Concussion Assessment Tool 3(SCAT3)からGlasgow Coma Scaleを除いた内容になっている。
HIA3ではこれに症状の時間経過が加味され、頭部外傷の発生状況に関する情報収集とHIAの全ての経過と結果が総括される。
HIA2,3でチェックされる内容についてはWRのホームページを参照されたい。