平成2年(1990)度 第43回社会人大会決勝

平成3年(1991)1月8日 秩父宮ラグビー場

神戸製鋼 18-16 三洋電機

(東京三洋が社名変更)

神鋼、ウィリアムスのトライで劇的逆転3連覇

平成2年(1990)度 第43回社会人大会決勝
1991年1月8日 G:秩父宮ラグビー場 R:真下 昇 KO 14:00
神戸製鋼 18 16 三洋電機
1 兼平 盛輝(法大) 6 9 1 田畑 欣也(釜石工)
2 弘津 英司(同大) 12 7 2 森川 進豪(同大)
3 山下 利幸(淀川工) 3 原田 克平(東洋大)
4 林  敏之(同大) 0 T 1 4 古賀 健一(淀川工)
5 大八木 淳史(同大) 0 G 1 5 岩津 嘉志(大体大)
6 武藤 規夫(同大) 2 PG 1 6 宮本 勝文(同大)
7 杉本 慎治(同大) 0 DG 0 C7 飯島  均(大東大)
8 大西 一平(明大) 8 シナリ・ラトウ(大東大)
9 萩本 光威(同大) 1 T 1 9 児玉 耕樹(同大)
10 藪木 宏之(明大) 1 G 0 10 大草 良広(法大)
11 綾城 高志(同大) 2 PG 1 11 ワテソニ・ナモア(大東大)
C12 平尾 誠二(同大) 0 DG 0 12 日向野 武久(作新学院)
13 藤崎 泰士(早大) 13 ノフォムリ・タウモエフォラウ(大東大)
14 イアン・ウィリアムス(オ大) 11 14 14 新野  拓(熊谷工)
15 細川 隆弘(同大) 15 藤田 信之(新田高)
交代【三】藤本三直(桐蔭高専)⑥、[三洋電機に社名変更]

 平成の名勝負、ファンの皆さんもタイトルであの試合かと思い出されることだろう。三洋電機は5度目の決勝戦、宿願の初優勝を99パーセント手中にしながら、女神はまたも三洋に微笑まなかった。

 三洋は毎年優勝候補に数えられながら、接戦をものにできず不運に泣いてきたが、今シーズンはラトウ、ナモアの加入、古賀、新野、藤田の成長で、チームに勢いが出てきた。攻守にバランスがとれ、今年こそ打倒神戸製鋼の大本命と目されて、ここまで力強く勝ち進んできた。

 前半17分三洋がラトウ、宮本でサイドを突き、モールから田畑がトライ、大草がゴールを決めた。三洋大草のPG、神鋼細川の2PGで9−6と三洋リードで折り返す。後半は三洋大草1PG、神鋼細川2PG、24分三洋新野のトライで16−12とリードした。

 ラグマガ、永田洋光氏の観戦記の一節を引用する。「時計はついに40分を越えた。神鋼はそこからFWが突っ込んでモールを作り、出た球を藪木がチップキック、三洋FB藤田がそれをキャッチして体勢を崩したままタッチへ蹴り出したが、そのとき藪木と藤田が交錯し、タッチジャッジは、一瞬藪木のレイトチャージをアピールするかのような素振りを見せた。観客席からはタッチなのかアピールしているのかよくわからなかったが、ここでペナルティを取られていたら、神鋼のV3はまずなかっただろう。2分後にヒーローとなるウィリアムスは『レフリーが時計を見たので、終わりかと思った』と振り返り、三洋の宮地監督も『勝ったと思った』といっている。しかし結局、神鋼ボールのラインアウトでプレーは再開した。神鋼はそのボールを必死に確保すると右オープンへ展開。切り札のウィリアムスまで回すが、マークのナモアが足をつかんで放さない。ウィリアムスがバックパスを送ろうとしたところを、三洋の藤田がはたきノックオン。そのスクラムが最後のプレーになることは、もはや明らかだった。三洋の初優勝は、もうそこまで来ていた。これから始まるプレーを守り切れば良かったのだ」。

 神鋼必死の反撃もついに40分を切ってロスタイムへ。いつ真下昇レフリーの笛がなるのか。いまならブーッとブザーが鳴ってからのラストプレー。神鋼が最後のボールをつなぎまくる。右オープンへ回されたボールがワンバウンドになったが、平尾がすくい上げてウィリアムスに。ウィリアムスがナモアを振りきってインゴールへ。これで同点。細川が決勝ゴールを冷静に決めて奇跡の逆転優勝のドラマが完成した。テレビ解説をしていた私はこの一連の動きと、三洋宮地克実監督の呆然とした表情が、スローモーションで脳裏に刻み込まれている。