テストNo.340 リポビタンDチャレンジ2017 オーストラリア代表戦

平成29年(2017)11月4日 G:日産スタジアム R:ニック・ブライアント(NZ)

日本代表 30-63 オーストラリア代表○

No.579★340 リポビタンDチャレンジ2017 オーストラリア代表初来日 オーストラリア代表戦 
2017年11月4日 G:日産スタジアム R:ニック・ブライアント(NZ)
日本代表 30 63 オーストラリア代表
1 稲垣 啓太(パナソニック) 3 35 1 スコット・シオ
2 堀江 翔太(パナソニック) 27 28 2 タタフ・ポロタナウ
3 浅原 拓真(東芝) 3 セコぺ・ケプ
4 姫野 和樹(トヨタ) 0 T 5 4 ロブ・シモンズ
5 ヘル ウヴェ(ヤマハ) 0 G 5 5 アダム・コールマン
C6 リーチ マイケル(東芝) 1 PG 0 6 ネッド・ハニガン
7 布巻 峻介(パナソニック) 0 DG 0 C7 マイケル・フーパー
8 アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコム) 8 ショーン・マクマホン
9 田中 史朗(パナソニック) 3 T 4 9 ニック・フィップス
10 松田 力也(パナソニック) 3 G 4 10 リース・ホッジ
11 野口 竜司(東海大) 2 PG 0 11 マリカ・コロインベテ
12 立川 理道(クボタ) 0 DG 0 12 サム・ケレヴィ
13 ラファエレ ティモシー(コカ・コーラ) 13 テヴィタ・クリンドラニ
14 レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ) 10 16 14 ヘンリー・スペイト
15 松島 幸太朗(サントリー) 15 カートリー・ビール
交代【日】ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)⑤、シオネ・テアウパ(クボタ)⑫、ヴァル アサエリ愛(パナソニック)③、流大(サントリー)⑨、田村優(キヤノン)⑭、フェツアニ・ラウタイミ(トヨタ)⑦、坂手淳史(パナソニック)②、山本幸輝(ヤマハ)① 【オ】スティーブン・ムーア②、トム・ロバートソン①、アラン・アラアラトア③、カーティス・ロナ⑮、マット・フィリップ⑤、ベン・マッカルマン⑦、ロペティ・ティマニ⑧、ジョー・パウウェル⑨
得点:Tファンデルヴァルト、マフィ、姫野、G松田、田村2、PG松田3

 11月4日のオーストラリア戦では世界トップクラスの強豪国の迫力と質の高いプレーの前に現時点での力の差を見せつけられる結果となった。オーストラリアの新聞の書き出しをそのまま借りたい。「ワラビーズは、そのサイズと速さとパワーでジャパンを63-30と圧倒した」(シドニー・モーニング・ヘラルド紙)

 実態を表して表現に過不足なし。ジャパンのジェイミー・ジョセフHCは、試合後の会見でこう語った。「我々より大きな選手に対するディフェンスで混乱をきたした。そのことが世界のラグビーのトップ4がいかにタフな存在かを示している」現実とは、しばしば、あっけらかんと苦い。前提がある。ワラビーズのマイケル・チェイカHCは、戦後、こう話している。「先月、NZを破った時の心構え、態度を変わらずに持ち続けたことが喜ばしい。」

 10月21日。ブリスベンで、オールブラックスに23-18の白星を挙げている。感激と誇りをなくさずにプレイブ・ブロッサムズとぶつかり、桜のジャージィの勇気を無慈悲にむしり取った。国際ラグビーの頂点に迫る格上が心の隙をいましめて臨んだ。すると格下の勇敢なタックルも一定の抵抗にとどまる。骨格や走るスピードや腕力の差はスコアに反映された。ジャパンはスーパーラグビーのハリケーンズを指導、激しく前へ出るライン防御を完成させたコーチ、ジョン・プラムツリーをディフェンス担当としてチームに迎え、原則、同じシステムの導入を始めている。相手アタックで前に立つ選手のみならず、その後方に控えて深く戻したパスを受ける者にも、先回りの勢いで思い切り圧力をかける。ジョセフHCは「ラッシュ」という表現を「無謀なイメージがある」(世界選抜戦前の会見)と好まないが、一般には「ラッシュ・ディフェンス」と称される例も多い。1970年前後のジャパンが実績を示した「シャロー・ディフェンス」のいわば現代版だ。高速の巨体(世界4強級の抱えるランナー)に時間と空間の自由を与えないという意味で正しい。ワラビーズに対しても幾度か効果を発揮した。無策で失点を重ねたわけではない。チェイカHCは、自軍のなかば急増の10番、リース・ホッジの評価に言及してこう述べている。「ジャパンはラインスピードによって彼を何度もテストした」。出足のよさについて意識していた。でも9トライを献上した。開始24分までに21失点。すべて反則後のラインアウトが起点だった。12番、サム・ケレヴィのコンタクトに始まって、そのケレヴィのフィニッシュに終わった連続攻撃。サインプレー。モールからの縦。オーストラリアの「敵陣ラインアウト後に仕掛けて仕留め切る」伝統は健在、ここで勝負はついた。

 ボール争奪やタックルに奮闘したFL、布巻峻介は「早いテンポで(球を)出させてしまい人数で負けた。相手の寄りが早くてスローダウンさせられなかった」と振り返る。前へ出るディフェンスについては「システムがどうこうというよりも、そのシステムをうまく遂行できればきつくはならない」。ワラビーズの強烈なコンタクトはただの衝突に終わらず判断の余地を残す。つなぐ、倒れる、立って踏ん張る。ジャパンのヒットを浴びてもボールだけは死なない。世界のトップ級との対戦ではもはや前提だ。だからこそ迷わずに現行の防御法を信じ、ふさわしいフィットネスと技術を身につける。そのうえで刺さっても刺さってもオフロードを許すなら、それはそれで次の手を打つほかない。外にかぶらぬ内からのカバーリング、突破を許したのちの戻りとタックルは課題だろう。

 終了寸前。正面ゴール前スクラムをしっかり組んで、初キャップの4番、姫野和樹が身上の強靭さをいかしてインゴールへ。「あのトライは余計だった」(チェイカHC)。そこにいたるP速攻、スキルフルなパス、SO松田力也の肝のすわったダイレクトなランの連続には、得点ボードでは「慰めの得点」に過ぎなくても、確かにチームの可能性を表現していた。

 (ラグビーマガジン2018年1月号より抜粋)