テストNo.346 リポビタンDチャレンジ2018 ニュージーランド代表第3回来日 ニュージーランド代表戦

English 写真 機関誌
平成30年(2018)11月3日 G:味の素スタジアム R:マシュー・カーリー(ENG)
日本代表 31-69 ニュージーランド代表○
No.585★346 リポビタンDチャレンジ2018 ニュージーランド代表第3回来日 ニュージーランド代表戦
2018年11月3日 G:味の素スタジアム R:マシュー・カーリー(ENG)
日本代表31-69ニュージーランド代表
1稲垣 啓太(パナソニック)19381オファ・トゥウンガファシ
2坂手 淳史(パナソニック)12312デーン・コールズ
3山下 裕史(神鋼)3アンガス・タアヴァオ
4ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ)3T54パトリック・トゥイプロトゥ
5アニセ サムエラ(キヤノン)2G55ジャクソン・ヘモポ
C6リーチ マイケル(東芝)0PG16ヴァエア・フィフィタ
7姫野 和樹(トヨタ)0DG07ダルトン・パパリイ
8ツイ ヘンドリック(サントリー)C8ルーク・ホワイトロック
9流   大(サントリー)2T59テトイロア・タフリオランギ
10田村  優(キヤノン)1G310リッチー・モウンガ
11福岡 堅樹(パナソニック)0PG011ワイサケ・ナホロ
12ラファエレ ティモシー(コカ・コーラ)0DG012ンガニ・ラウマペ
13ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ)13マット・プロクター
14ヘンリー ジェイミー(トヨタ)10714ネヘ・ミルナースカッダー
15山中 亮平(神鋼)15ジョーディー・バレット
交代【日】中島イシレリ(神鋼)④、田中史朗(パナソニック)⑨、中村亮土(サントリー)⑭、三上正貴(東芝)①、庭井祐輔(キヤノン)②、ヴァル アサエリ愛(パナソニック)③、ヘル ウヴェ(ヤマハ)⑤、松田力也(パナソニック)⑮ 【ニ】ジョージ・ブリッジ⑭、ティム・ペリー①、リアム・コルトマン②、ガレス・エヴァンス④、ティレル・ロマックス③、ディロン・ハント⑦、ミッチェル・ドラモンド⑨、ブレット・キャメロン⑪
得点:Tサムエラ、ツイ、ラファエレ2、ヘンリー ジェイミー、G田村3

 開始4分。PGの先制を許したあとのリスタート。ジャパンは目論見通りのトライを奪った。SOの田村優が、中央へ正確に高いボールを上げた。つぶす。6番のリーチ マイケル主将がしつこくファイト、黒衣のSH、テトイロア・タフリオランギに不快を与え、FBのジョーディー・バレットのリターンのキックめがけて赤白のLO、アニセ サムエラがチャージ、インゴールで抑えトライを挙げる。オールブラックスを向こうに、リスタートでも「ノーホイッスルトライ」をせしめたチームはまれだ。ジェイミー・ジョセフ体制下で積み上げた「キックからの圧力」の習熟の成果だった。
 同15分。こんどはジャパンのそのスタイルが逆襲のトライを許す。中盤のラック。SH流大が右タッチライン際へパント。ここまでは想定内。しかし、乱れが生じる。最初に球を追った12番のラファエレ ティモシーが接触時に頭をぶつけ、走って戻れず帰陣が遅れた。オールブラックスは、欠員の生じた防御ラインをすかさず狙った。右遠方に楕円球を運んで、やすやすと右ライン沿いをゲイン、数次の攻撃で、HOデーン・コールズが左インゴールへ駆け込んだ。同じ構図のトライは、後半20分にもあった。ジャパンは自陣から高いキック、FB山中亮平がチェイス、倒す。ただし、ここで脚をわずかに痛めた。後方への戻りが遅れた。オールブラックスは短く右ー左と動かし、大きく左へクロスフィールドのキックパス。途中出場のジョージ・ブリッジがつかむと、直ちに前方へ低く蹴り、自らキャッチしてサポートの13番マット・プロテクターへつないだ。
 フィールドを俯瞰して「誰かの不在」をかぎとり、際立つスキルでトライへ結ぶ王者の凄みは確かだった。破壊力や足の速さではなく、機を見るに敏、幅広くパスを送り、過程に生じる防御のかすかな乱れを逃さず、幼少より培った個の感覚、身のこなしで「違い」を生み出す。セットプレーはシステムとパワーが融合されている。ジャパンの面々が口々に述べた「ブレイクダウンのうまさ(タックルを仕掛けた選手が素直に離れず、されど反則の手前にとどまる)」もノウハウというよりも、競技規則における限界を細胞化してしまう「国力」のようだった。
 球の奪取、突進に光を放ったジャパンの7番、姫野和樹は勝者をこう語った。「シンプルでしっかりしている。スキルの精度が高い。」交代で登場のSH田中史朗のコメントも似ていた。「特別なことではなく、当たり前のことを当たり前にプレーしてくる。(昨年対戦した)アイルランドと似ています。自分の仕事を100%こなす選手が揃っている。」
 31-69。トライ数は5対10。接戦ではないが、退屈でもなかった。楽観は禁物ながら悲観すべきでもない。
 後半12分。田中の好リードでじりじり前進、田村は右に回り込むようにパスを受け、芝にボールをそっと置くようなキック。初キャップ、オークランド生まれで立正大学出身のヘンリー ジェイミーが「アドバンテージを貰ったキックパス」と予測、右コーナーを陥れた。
 収穫はスクラム。左PRの稲垣啓太は明かした。「それほど脅威は感じなかった。僕らの方向性は間違っていない。そう思います。押せる場面もあった。ただ、よいエリアでマイボールのスクラムがなかったので」モールのドライブ共々裏切らなかった。
 ジャパンの最良の瞬間は開始25分過ぎ。左WTBの福岡堅樹が、相手の14番、ワイサケ・ナホロに背後から追いつき、起きて後ろへ回ってターンオーバーを遂げた。ワールドクラスの反応とスキルだった。