上三川町デジタルアーカイブ

上三川の民話

ねずみ観音

昔ナ、今の本郷小学校の近くの天垂れという所にナ
一匹のかしこいねずみが住んでいたト

そのねずみは街道を速く走って通る馬を見てナ
「あんな馬になってかけ廻れたらいいなあ」と思っていたト

ある日のこと、お地蔵様が夢に出て来てねずみに言ったト
「私は後ろの姿はないし、お参りに来る人も来なくなってほこりだらけじゃ、祠の中では世の中の事も何も解らないし、私のためにつくしてくれたら、馬になりたい願いを叶えてあげよう」とお地蔵様は言ったト
そして「三十五日の間は悪いことはしないように」と約束させたト

ねずみはナ、夢から覚めると
道の傍らにあるお堂の中に入ってみるとナ
夢で見た通りだったト

ねずみはそれから一生懸命お地蔵様に世の中の事を伝えたり、まわりを掃除したト

やがて満願の三十五日を迎えて、お花を上げようと通りに探しに出たらナ
お菓子を手に歩いて来る女の子を見つけたト
その女の子から無理やりお菓子を取り上げてナ、お地蔵さまにお菓子をお供えしたト

「お地蔵様、早く馬にしてくだせえ」とねずみが言うとナ
お地蔵さまは「お前の望みは叶えられたぞ」と静かに言ったト
ねずみは嬉しくて近くの堀っこまで走って行って、

水に顔をうつしたらナ、びっくりしたト
顔は馬だが、体は元のままのちっちゃなねずみであったト

ねずみは悪いことをしたことに気がついてナ、おわびにお地蔵様の後ろ姿を掘ることにしたんだト

来る日も来る日も、夜通し掘っていたがとうとうねずみは命果ててしまったんだトサ あわれに思ったお地蔵様は、自分の後ろにねずみを馬頭観音として祀ってやったト

村人たちはその後、お堂を建ててねずみ観音とし、毎年十月にはお祭りをしてナ、甘酒をふるまっているんだト
今でもねずみ観音は道ゆく人の安全と子どもらの健康を祈っているんだとサ

おしまい