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り、ついに湖の水はあふれて石木を押し流す。太郎はここかしこ切り裂かれ、流れ出る血で湖や川を真赤に染め

ながら大湯川の谷に沿って敗走する。八郎太郎は鹿角盆地をせき止めて住みかを作ろうとするが、住みつかれて

は大変と神々が石を投げつけたので、太郎は下流に下り、鷹巣盆地をせき止めて浅い湖を作って住みついた。こ

れをみた神々は相談し、七座の峡谷を切り開いて日本海岸の八郎潟へと送り出した」というのである(平山・市川

『一〇〇〇年前のシラス洪水』)。ところで、八郎太郎と南祖坊のすさまじい格闘の場面を十和田火山の噴火、敗走を

火砕流の流下と見なすことができるのではないだろうか。こ伝説はまさしく十和田湖の噴火のようす、大湯川に

降り注いだ軽石流、やがてシラス洪水となって流れ下る情景をそのまま物語にしたものと考えられるのである。

最近の火山灰学(テフロクロノロジー)の進歩は目ざましい。毛馬内火砕流を研究した町田は、「日本海を渡

ってきたテフラ」の中で、この火砕流は十和田a降下火山灰と一連のものであり、十和田最後の火山活動である

とした。つまり、降下火山灰・軽石(噴出量は約一~二立方キロメートル)にはじまり、次にベースサージ(約○

・〇一立方キロメートル)さらに火砕流(毛馬内火砕流、約〇・一立方キロメートル)の噴出と続いた。このう

ち特徴的なものとして、ベースサージ堆積物がある。この堆積物は十和田カルデラの縁南部の発荷峠・熊取平

紫明亭などに分布するが、ベースサージとは、ビキニの核実験でみられたような、垂直に上昇する噴煙の下底部

から、波のような雲が海面を猛烈な速度で広がる現象につけられたもので、海底火山・湖底火山の水蒸気噴火で

も、しばしばこのような噴火が見られる。この堆積物の特徴は低角の斜交層理構造をしめし、粉砕度が高く、細

粒の火山灰からなる。淘汰が悪く、しばしば火山礫、火山弾を混入する。