テキストを表示
らく続く。しかしさらに奥地へ進むと、やがてスギの林もつきて、山地らしい落葉広葉樹の自然林にかわる。そ
してやがて谷が深くなるにつれて、サワグルミやトチノキなどの巨樹が目に入るようになるが、しかしよく周辺
をみると、こうした巨樹を含む原生的自然林、落葉広葉樹林も、人手の及ばないような断崖を含む急崖斜面や渓
谷ぞいに限られており、人手の及ぶような山腹から山頂にかけては、ここでも大規模な伐採が進み、スギなどの
植林が行われている。稜線の山頂に通じる林道を登って尾根部へ向うと、その途中では、ところどころの急崖地
などで、ブナやキタゴヨウ、クロべなどの径一メートル近いみごとな残存樹がみられ、また遠くの頂部には、ま
っすぐにのびた姿のキタゴヨウやクロべと思われる針葉樹の高木を遠望できる。これらわずかの伐採をまぬがれ
た残存樹から推して、つい最近までこの辺一帯はブナの原生林で広くおおわれ、しかも高部や急崖地、岩角地に
は、キタゴヨウ・クロべなどの針葉樹を含み、渓谷ぞいの下部では、湿性林としての発達したサワグルミ林を含
む、最も典型的な冷温帯落葉広葉樹林の安定した極相林であったと考えられる。現在は、山頂山腹のブナ林は伐
採によってすっかり姿を消して、渓谷沿いの湿性林、サワグルミ林だけが、変わらぬ姿を残している。渓谷沿い
の河畔地帯にはほとんど自然のままと思われる、サワグルミ・トチノキ・カツラなどの巨樹が密林をなして奥地
まで続き、林内にはヒメアオキ・ケナシヤブデマリ・ムラサキヤシオツツジなどの低木や、林床には多くのシダ
類やヤグルマソウなどの群落がみられる。また土砂の崩壊のはげしいところでは、ヒメヤシャブシやタニウツギ
などもみられる。
以上のように、夜明島は典型的な渓谷自然林のみられるところとして、現在でもまことに貴重な自然といえる。