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当時の選挙権は、地租を納める者即ち土地所有者に与えられていたことは、前述の通りである。この有産者優
先の意図は、右の錦木村の場合にみられるように、村に居住していない村税の多額納税者つまり不在大地主に対
して、例外的に選挙権が与えられていたことにもあらわれている。
なお議場の秩序について、錦木村会は二二年一〇月議事細則を次のように定めた
『錦木村
郷土史』
)。その厳粛さが
偲ばれるいくつかの条項をあげると、第一条「議員は議場に出席するときには洋服又は袴を着用すべし」、第三
条「村会は一日審議の時間を五時間とする」、第四条「議員は議場に出席するには、書記の時報の合図により議
員先ず着席し、次に議長着席すること。議長の着席と共に議員一同立礼すること。退場は議長自ら是を報じ、議
長先ず退場し、議員は一番議員より順序に退場すべし」、第五条「着席中は厳粛なるべし、決して左の挙動ある
声を出して
べからず。1、議事中談話、私語すべからず。2、書類の誦読
)すべからず。3、みだりに自席を離
読むこと
るべからず」などである。
名誉職
町村長・助役・町村委員
は、公民の直接選挙によることなく、町村会での議員の
衛生、学務
委員など
投票によって選ばれ、原則として名誉職であった。名誉職とは、無給を建て前として、職務上
の実費弁償や勤務によって本業を妨げられる場合のみ、若干の報酬を給される吏員のことである。
町村長・助役らを名誉職と規定したことは、町村の経費節減、財政健全化をはかる目的から出ていた。しかし
同時に少額の報酬で長期にわたり行政の仕事にたずさわることのできるのは、経済的にも時間的にも余裕のある
資産家でなければならない。本質的には名誉職を名分として有力者・地主階層が行政を独占的に支配できる自治
体制をめざしていたことは論をまたぬところである。