テキストを表示

鉱山事務所を襲うに至った。

当時の資料によると、おうよそ次のような状況であった。

一四日午前九時すぎ、岡田平太、大江松太郎始め職員が執務に入って間もなく、洋服着用の者六、七名が突然事務所〓

関に押入り、大声で岡田君へ面談したいと叫んだ。名を問うと、我は佐伯剛平、大至急の要談ありといいつつ会計局に

侵入してきたので、やむなく応接所に通した。佐伯は岡田に向い大声を発し、吾々は阿部潜より当山坑業事務引続きの

委任をうけた、君は当山事務を管理する権限なきを以て速かに事務引渡すべしと要求した。岡田は意外の強談に答える

所を知らなかった。この時には洋服着用の者四、五〇名、小真木鉱山と染抜いた法被を着た者六、七〇名、総勢百二、

三〇名が棍棒をもち、なかには短銃を帯びる者もあって、事務所の四周を取囲んでいた。

〓伯は益々威を張り、岡田に対し、君はもはや頭取の権限はない、あくまで引渡を拒むならば青山金一郎に引継がせ

事務所を奪うが如何に、と迫った。そこへ越俊道

一が入室し、阿部潜は本年一月以後自ら退任し無関係となった人

である。その委任を受けたとしても阿部個人の権限では自由にならない、として説得を試みた。しかし佐伯は一言

で斥け、本社の全権は阿部にあり、不審ならば直ちに東京の阿部に掛合ってみよと言う。境豊吉

事務所

職員

)も入室し、吾

は阿部の委任をうけ一切を処理する権限をもつと強弁する佐伯に対し、然らばその委任状を一覧させよと求めたが、佐

伯は汝に示す理由はないとはねつけた。岡田が、元来鉱山は岡田家の所有であると言えば、佐伯は岡田家の所有ではな

く鉱業会社の所有であると言い返す。岡田の、鉱業会社の頭取の権限で責務を扱うのであるというのに対し、東京府庁

も在東京の社員も既に岡田の頭取を認めていない。即刻事務を引継ぐべしと大声をあげる。

その時事務所表門の辺りで、一発の銃声が響いた。同時に佐伯は席から立ち上って決行せよと命令を下し、傍らにい

た小真木鉱山主代理人河野幾蔵は、先般来の契約に基き事務引渡しありたしと叫んだ。それを合図に外に群集していた

暴徒は、忽ち会計局に乱入した。室内の什物器具を一々差押え、その上金庫に手をかけようとするのを課員数名が必死

に防いだ。更に佐伯の采配に暴徒は戸障子を明け放ち、防禦の課員を突き倒し、事務所内の什物器具を押入戸棚は勿論

課員の私物に至るまで封印を施した。事務所の前に近くの製鉱鎔鉱の同山職工二〇〇名余が集合したが、どうすること