国道274線を札幌に向かい共栄工場線を過ぎると、裏の沢川が横断しています。かつてはここに「行幸橋(ぎょうこうばし)」という小さな橋がありました。その昔この橋は「みすて橋」と呼ばれていました。明治のころでしょうか、一人の女の人がこの橋までやってきました。その女の人は、北海道に渡ったまま行方知らずになった夫を探して旅をしていました。身重だった女の人は疲れ果てて、ついにこの橋のたもとで産気づき、子供を産みました。しかし、母も子も寒さと疲れで、ここに凍死してしまいました。近くの村人たちは、この母子を橋のたもとに葬りましたが、世間から見捨てられた二人を哀れに思い、誰言うことなくこの橋を「みすて橋」と呼ぶようになりました。まだ汽車も自動車もない時代の、哀しいお話です。
本文・イラスト「きたひろしま歴史物語」1996年,北広島市