開拓はじめのころ【その壱】第十話

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 広島の開拓に入った人々の暮らしは、いまの人には想像もつかないものでした。開拓のはじめは、木の根っこ掘りからでした。坂本安太郎(大曲)
 トドマツやネマガリ竹がびっしり生えていましたよ。高橋松三郎(西の里)
 ヨシがいちめんに生えていてひどいものでした。野村源三郎(南の里)
 毎日、毎日木を燃やすのが仕事で、熱くて頭の髪の毛がこげるほどでした。大谷元恵(広島)
 お金がいるので、堤防工事に出たり、炭俵を編んで売りに行ったりしました。住田伊三郎(中の沢)
 子守でろくに学校へも行けなかったですよ。浜田マツ(広島)
 水車で米をついたり、めん羊を飼って毛糸をとったりしたのです。そんな生活のなか大風で家が倒れたり、山火事で家が焼けたり、千歳川や島松川の水があふれて、作物がだめになったりしたこともありました。「それに昔は凍(しば)れましたねえ。晩になると外で立木が凍れるのかパチーン、パチーンと音がしたもんです。」と高橋松三郎さんは語っています。