富山のくすりやさん【その壱】第二十三話

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 開拓のころ、お医者さんも少なく近くにいないこともあって、体の具合の悪いときには「富山のくすり」を利用したものでした。「富山のくすり」というのは、富山県からくる置き薬のことで、紙の大きなふくろに小さい紙ぶくろや、薬の小箱などが入っているのです。厚紙の箱に入ったのもありました。くすり屋さんは一年に一回まわってきて、使った薬代をもらって、代わりの薬を置いてゆくのです。毎年同じ人がまわってくるので、家の人々と顔なじみになり、いろいろとニュースを教えてもらえたものでした。紙の風船や色のついた箸などをお土産にもらえるのも楽しいことでした。軽い病気のときは良かったのですが、急な病気やお産で困った人はあちこちにおりました。戸板にのせられて、札幌まで運ばれていったのでした。