本に化けた富ヶ岡のイタチ【その弐】第十三話

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 私の少年時代(大正の後期)音江別の沢にもイタチがいて、よく獲りましたよ。冬の沢に、トラバサミと、箱で作ったワナと各二つずつ仕掛けておいて、朝早く見回りにいきます。かかっている時は「やった」と思いましたよ。イタチの皮は、いい値段で売れたんです。剥いで広げ、板に張り乾かすのです。何枚か貯まると、豊平の皮屋に持っていくんですよ。一枚一円二十銭から、二円五十銭くらいでしたね。一番高く売れたのは、一枚五円でした。そのころの五円はいいお金でしたよ。本が好きだった私は、その金で好きな本を買って読んだんですが、これが後でいろいろと役に立ったようです。全くイタチのおかげでした。えさはニワトリの頭とか、豚の骨、肉の切れ端などを使いました。
 ひと冬に十二匹獲ったのが、私の記録ですが、昭和に入ると、だんだんイタチも少なくなってしまいました。
(富ケ岡 石橋豊次郎)