カラスに盗(と)られた弁当【その参】第一話

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 昭和のはじめのころの話、竹山の畑のエンバク落しに、妹と行った時のことです。「さてお昼にしよう」と弁当を架けておいた立木の所へ行くと、私のも妹のも弁当がないのです。風呂敷ごとカラスが盗っていったんですね。「やられた」と思いました。前に近所の白崎房吉さんの所でも、畑仕事に出て、昼の弁当をカラスに盗られたと聞いていたのに、うっかりしていたわけです。
 味をしめたカラスは、あちこちで昼の弁当をねらっていたんですね。私も妹も腹をすかせて、早めにしごとを切り上げて帰りましたが、それからは弁当を木にかけることはやめました。そのころの弁当箱は、いまでは見ることもない「柳行李(やなぎごうり)」の弁当箱でした。
(富ヶ岡 石橋豊次郎)

 カラスは、畑のいたずらをするので困りました。どの農家でも、光るものをつるしたり、張ったり工夫しています。カラスは頭のいいやつで、人間との知恵比べですね。私の所では、デントコーン畑に、ビニールの糸をはりましたが、これはよかったですね。
(富ケ岡 小池光治)