木の洞(うろ)をくりぬいた「ごえもん風呂」【その参】第十七話

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 入地した後の「ごえもん風呂」は、シナの大木の洞(うろ)をくりぬいて、底に鉄板を打ち、石の台の上にすえたものです。台があるので、底の木のところもこげないで、長く使えました。月や星を見ながらの「ごえもん風呂」もいいものでしたよ。
(西の里 片桐英雄)

 「ごえもん風呂って、大きなカマなんですよ。かまどが下にあって、じかに火を焚くもんですから、風呂の湯はすぐ熱くなりますが、風呂そのものは鉄でしょう。やけどをしないように、鍋蓋のようなカマの蓋よりはひとまわり小さい蓋を沈めて、ソッと入るんです。そんな時代ですから、石けんなどもちろんありません。米ぬかを布ふくろに入れ身体を洗いましたが、けっこうきれいになりましたよ。井戸なんかなかったけれど、川のそばには、わき水がジョンジョン出ていたんです。きれいなとても冷たい水でした。それを早くから手桶でくんでおいて、風呂に入れておくと少しぬるくなるんです。
(広島 大谷元恵)

 私の所は、箱形の風呂で、底の方には鉄板がはめこむようになっていました。ふちには水がもれないように、キハダの皮などをはさみます。底が鉄なので、底板が浮いているのです。後には底板が浮かないように、セットされて売られていました。これも私たちは「ごえもん」と呼んでいましたね。市街にも風呂屋さんなどはなかったのです。
(南の里 沖中武雄)