佐々木照義
原題 馬の話(大曲NO.〇一七)
採話日 平成一二年九月二五日
話者 佐々木照義氏
採話者 富谷春子、畠沢末吉、吉田久栄
編集者 吉田佐由美
採話場所 佐々木照義氏宅
公開日 平成一四年五月一日
佐々木さんとエゾアラシ号(開拓の村)
昭和33年9月19日、当時の広島村で開かれた輓馬(ばんば)競争の様子
馬が好きで馬ばっかりやっとったのさ。親父が馬喰してたからね。
馬の好みもはっきりしていた。俺は本当におかしなやつなんだ。馬を使って金儲けしている人間だけどね、姿が悪い馬は見るのも嫌なんだからな。
姿のいい馬ってな、やっぱり人間でいえば、ぶりが一番いいとかよ。毛並みとか骨格とかは、その人の好き好きだけど、俺は姿さえ良かったらいいんだ。仕事しなくても姿が良かったらいいんだ。
昭和二〇年頃だったな、中島公園で全道共進会って、一位二位を争う馬の品評会をやってた時なんて、俺らもよく馬を出してた。函館あたりから二晩野宿して歩いてくる人もいたんだから。
食う物ったってなんぼも持って来ないで歩いてくるんだ。だから、こっちの会場にきたらお互いの顔や名前覚えているから、帰りにえん麦でもふすま(1)でもやるんだ。持って帰れって。それでありがとうって別れて、こっちから行ったときにはもらえる。お互いにね、そんなんだったね。
全道共進会に出した馬の写真かい?ない、ない。
だいたいそんなものね、写真撮って記念にどうっていうんでないんだから。馬を出しているもの同士、お互いに「あの野郎ただもんでないぞ」ってだけで、それだけで終わりさ。そのために仕事ぶん投げて歩いているんだから。
馬を飾ること?する、する。それは金かけてるよ。今だと、トラック飾って走るしょ?そんなもんだよね。人のを見て、「どこで作ったのよ、体裁いいな」って言って、旭川で作ってるって聞いたら、旭川に注文するんだ。お互いに、これはちょっと格好いいなとか思ったら真似して作ってくる。自分は裸でいても馬には金はかけてる。いやぁ、もう色々飾ったね。
注
(1)小麦をひいて粉にしたあとに残る小麦の皮。主に牛・豚など家畜の飼料に用い、また洗い粉としても用いた。
佐藤憲正『日本国語大辞典 第二版 第十一巻』小学館
平成一三年一一月 八六八ページ