[競馬のはなし]

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 馬の話が出たから競馬の話もするか。
 昔の競馬っていうのは、農家の経営する働き馬で競争するわけです。輓馬(ばんば)だね。
 毎年、回り番で広島を会場にしたり、それから恵庭行ったり、江別行ったりね。だいたい、広島・江別・長沼・島松って近郊の馬好きが、その会場を回り番で決めてやってたの。
 
 昭和三〇年までは、どこでも輓馬競走やってたね。
 馬橇に、一個一〇キロ単位か何キロ単位かのコンクリートを馬の体重に合わして載せて、それで競ってたね。
 輓馬用に出す馬ってのは毎日磨いて、同じ馬でもちゃんと首のとこにする綺麗な飾りつけて、名前を書いて鈴つけてたね。
 馬橇は、冬に使う馬橇の裏鉄とっちゃってたね。裏鉄って、鉄打ってあるんだけど、それを木だけにしちゃってね。毎年、裏側外したりなんかするの大変だから、輓馬用に作って別に持ってるわけ。
 個人で持ってた人もいたね。そういうのにはね、好きな人は金惜しまないんだな。若いもんが車に凝るのと同じだ。
 それで、いざとなったら馬に興奮剤飲ましてね。酒飲ましたらダメなんだ、酒よりもビールの方がいいんだね。もう、瞬発力が出てウワーと立ち上がるんだわ。
見物人も一緒になってビール飲んでたね。
 馬にビール飲ますときは、一本ぐらいそのまんまグーッと飲ましたりね。いろいろ飲みやすい方法で飲ますね。泡立つと飲みこみづらいしょ。だから開けて抜いてかかる人もおるし、抜いたら気合い抜けるから駄目だっちゅう人もおるし…。
 
 そういう馬はね、大体、冬山造材にね、丸太運搬とかね、そういう仕事やって、力つけてるから。今でいう四トン車のトラック引っ張っとったもんね。あの、「ばちばち」とかっていう冬の橇をね。
 一台三〇石ちゅってね、一石ちゅったら体積で昔の一尺×一〇尺の体積だから。その丸太を三〇本もつけるんだから。それを引っ張り出すぐらいの力あるんだからね、かなりの力でないと出たってとっても優勝はしないね。だから、それぐらい強い馬を自分で仕込むか、買ってくるかだね。農業経営もそれのために儲けがなくなる人もかなりいたよ。それでも、やりたいんだから。
 競馬が好きな人は、馬買う時に馬喰に頼らないで、十勝まで自分で買いにいく人がいたぐらい。十勝には馬市場があるから。
 釧路らの馬は純血の居る所で、太いから、大体、向こうへ買いに行くんだね。そしたら、枠に入らないわけさ、幅が太くて。それぐらいの馬を買ってくるのいるの。
 ここら辺の馬喰同士だったらさ、どうしても悪いの掴まされる、で二頭引きが入る頃ってなると、馬体が大きくないと引けないから、鞍もだんだん大きくなってくる。そうすると、やっぱり、これも改良して、十勝の市場まで買いに行く。どうしても、馬喰で買うと騙されるっていう確率高いからね。
 
 そのうち、輓馬に限らず、だんだん普通農耕にしても二頭引きになってきてね。大体あの、力の強いペール系になってきたもね。はじめは足の速い中間種系ちゅって、アングロ・ノルマっていう品種か、そういうの入れてたんだけど。だんだん重量級の、純系のペルスロンを入れだしたな。