[温泉の経営]

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 露天も掘ったんですよ。北海道一って看板に書いてあるでしょう。そしたら、横路さんの由美子さん(2)、「北海道一って、書いて大丈夫なの?」って。それから、私、妹背牛だとか、連れてってもらって、露天風呂にみんなで入ってみて「やっぱり、北海道一だ」って思いました。
 その露天風呂、やるのが面白いんです。あの、前はね、小さな風呂だったの。それをね、一億二〇〇〇万かけて増築して、これ掘って。それが、お金の算段がつかないんですよ。掘った時にね。
 みんな使って、借金してね。二〇〇〇万ちょっとあったんです。あとは、借金ですから。信用金庫にね。だからね、大変なの。大工さんたち、みんなで言ったって、一二月の三〇日開店なの。そして、もし駄目だったら、みんなで借金背負おうって、大工さんたちで。そうやって、私に言わないで、話していたって。
 そしてね、とうとう、こうなったんですよ。本当に、お金できなくて、ある人に相談行って、そして、その人がすぐ作ってくれた。東京から持ってきてくれたの、現金で。そして、その利子が四分です。当時四分なんてありませんよ。
 みんなのおかげです。
 でもね、開店の前にこうなったら、もう、破算でしたね。一度はね、父の破算見て、二度目は、東京のおじの見て、三度目になったらどうしようと思って。
 掘ってから、次の年増築しましたでしょう。だからね、改めて開店したのが、平成元年一二月の三〇日。私は三日間、一睡もしなかった。
 こんなにお客さん来ると、私も考えなかった。
 
 それにしても、やっぱりね、辰年だから、やるんですね。苦労を苦労って感じないんです。
 
 お客さんが、私の所にいらして、「二代目でしょう」と言うの。「五三才でやったんですよ」と言うと、「エ~ッ」と言うの。今、話したように、みんなの力です。陰の力って、偉大ですもの。
 一生のうちに、力出す時ってあるんですね。
 
 


(2)元北海道知事 横路孝弘氏夫人