日本の先土器文化は、氷河時代最後のヴィルム氷期頃に始まり、約一万年前頃までつづいた石器文化である。年平均気温は現在よりも五度以上も低く、日本列島は大陸と陸つづきで、日本海は広い湖のようであった。大陸との陸橋からは、ナウマンゾウ・オオツノシカなど南方系の動物と、ヘラジカ・ヒグマ・マンモスゾウなど北方系の動物が移動してきた。この頃の日本列島は富士山・箱根などの火山が噴火をくりかえし、噴火によって吐き出された大量の火山灰は、各地に堆積してローム層(赤土)を形成した。
日本列島に始めて住んだ先土器時代人は、陸橋を渡ってきた動物を追って移動してきたと考えられている。先土器時代人は、石・木・骨・角などでいろいろな道具を作り、狩猟採集の生活をし、居住地の周辺に食糧がなくなると他の土地へ食糧を求めて移動した。さまざまな道具の中で、現存するのは石で作られた道具(石器)がほとんどである。
先土器文化は、石器の特徴から敲打器(こうだき)文化、ナイフ形石器文化、細石刃(さいせきじん)石器文化、大型石刃(せきじん)石器文化の四つに大別される。敲打器文化は、チョッパー、チョッピングトゥールなどがみられ、高萩市上君田遺跡や那珂郡山方町山方遺跡などが知られている。ナイフ形石器文化の遺跡は高萩市赤浜遺跡・鹿島郡鹿島町伏見遺跡などが知られ、動物の解体などに利用されたナイフ形石器などの剥片石器が多い。細石刃文化は、小さな石刃を特徴とし、勝田市後野遺跡B地点・那珂郡那珂町額田大宮遺跡などが知られている。大型石刃石器文化には那珂郡大宮町梶巾(かじはば)遺跡・水戸市赤塚遺跡などが知られ、それぞれ石器の組成に特徴を示している。