1 降水と自由地下水面の関係

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 長い間、武蔵野台地上に集落が立地しなかったのは、土地は透水性が良い関東ローム層と段丘砂礫層(だんきゅうされきそう)の地質から構成されているため、地表面から自由地下水面(いわゆる井戸水の水位で、以下、地下水面と略す)までが深い、いわゆる「乏水(ぼうすい)台地」であるためである。前章で述べられているように、台地を侵食する河川や段丘崖(だんきゅうがい)に沿っては地下水面が浅く、あるいは一部では地下水が湧出(ゆうしゅつ)している場所がある。それらの場所では、小さな集落が帯状に分布していた。
 小平市付近の年間降水量は平均して約一、五五〇ミリであるが、多い年は一、八〇〇ミリを超え、少ない年は一、二〇〇ミリに満たない。工事現場で一塊(ひとかたまり)の関東ロームを採取し、その中に毛管現象(もうかんげんしょう)で含まれている水分を測ってみると、重量にして約半分は水分で、水分を除いた関東ロームはスポンジのように軽く、間隙(かんげき)が多いことが分かる。そのため、降水の多くは毛管現象と重力によって地下へ浸透し、武蔵野砂礫層や上総層群内に滞水(たいすい)している。
 図3-1には、小平市内における降水量と地下水面の関係が示されている。図によると、降水量が多いのは四月から六月中旬までの梅雨期と、八月から一一月までの台風や前線の移動に伴う時期である。一方、地下水面についてみると、一〇月下旬から一一月上旬が最も高くなり、四月が最も低く、一年間を一サイクルとするサインカーブで上下している。地下水面は降水量に強く影響を受けていることから、両者の相関関係をグラフとして明らかにしたのが図3-2である。一般に、一回の降水は数日間続くため、図には横軸に数日間の総雨量、縦軸には総雨量に伴った地下水面の上昇量が示されている。図によると、一回の降水量が八〇ミリ以下の場合、水位が六〇ミリ以上上昇する時もあれば、三〇ミリ以上低下する時もある。これは降水までの間に、関東ローム層や段丘砂礫層に毛管現象として、どの程度の保水(ほすい)があったかどうかを示し、保水が少なかった時は、少々の雨が降っても、その水は毛管現象として厚さ一〇メートル前後の関東ローム層内に留まるため、地下水面まで達しないことを示している。八〇ミリ以上の降水があると、すべての降水は地下水になるため、地下水面は上昇する。グラフによると、降水量一〇〇ミリに対し、上昇量は約六五センチである。
図3-1
図3-1 小平市仲町における、降水と自由地下水面の関係
上段から降りる縦細線は府中(AMeDAS)における日降水量で、目盛りは右側。下段の黒点は仲町における自由地下水面(井戸水)の朝9時における水位で、目盛りは左側。▽印は市内全域の測水時期

図3-2
図3-2 小平市仲町における、降水量と地下水面との関係

 小平市内の地下水は、降水量によって増減するとともに、地層内をより高い場所からより低い場所へ移動している。このことを明らかにするため、水位が最も高い一一月と、最も低い四月下旬に、市内とその周辺の地下水面を測定した。