②B地点【概報1、報告書8】

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 石神井川源流部の北部、小支谷(しょうしこく)を挟んでA地点の南西に位置する台地の縁辺部である。A地点とともに昭和四九年八月二五日から調査に着手したが、旧石器時代の調査は昭和五〇年二月頃からの開始である。
 遺物はⅢ層、Ⅳ層上位、Ⅳ層下位、Ⅴ層、Ⅶ層、Ⅸ層下位、Ⅹ層での七枚の文化層が確認された。後述の水車関連遺構によってプライマリーな〔もともと埋まっていた〕位置を離れてしまった遺物も多い。石器ユニット〔有機的なつながりが想定される遺物のまとまり〕はⅨ層の六か所をはじめ各文化層で多数認められる。さらに接合関係、同一母岩〔石器や剥片類の材料〕の識別等が丹念に行われた結果、その有機的な推移が復元されている。
 石器ユニット以外の遺構としては、Ⅴ層から一基の炉址(ろし)が発見されたほか、Ⅳ層から一基、Ⅸ層から七基のピット〔地面に掘られた穴=土坑(どこう)〕が発見されている。ピットは不整形のシミ状の落ち込みであるが、台石(だいせき)〔石器製作等の作業台として使用されたと考えられる平坦面をもつ大形の石〕が転用された大形の焼礫や、炭化物片を覆土(ふくど)〔土坑などを埋めていた土〕中に含むものも見られ、何らかの人間活動を反映したものと考えられている。礫はⅨ層で多数確認され、その平面分布は石器ユニットと一致する様相が観察されている。またⅦ層、Ⅳ層で礫群が確認されている。Ⅳ層を中心にナイフ形石器をはじめ、台形様(だいけいよう)石器、切出形(きりだしがた)石器、スクレイパー〔掻器(そうき)、削器〕、のみ状石器、叩(たた)き石などが多数発見、報告されているが、特記すべき資料としては水車関連遺構の水路の覆土からの一点を含めた二点の局部磨製石斧(せきふ)〔=斧型石器、以下同〕と四点の打製石斧、およびⅩ層出土のナイフ形石器がある。
 このうちⅨ層で見つかった磨製石斧一点、打製石斧三点はまとまって出土しており、デポ〔遺物を埋納(まいのう)した遺構〕の可能性が指摘されている。また、Ⅹ層出土のナイフ形石器は、立川ローム内で見つかった最古のナイフ形石器として注目される。このほか水車関連遺構の覆土から見つかった小形の線刻礫(せんこくれき)は、「ビーナス」として報告されている。扁平な砂岩円礫の端部、側縁部に擦痕(さっこん)がめぐり、表裏面にも多方向からの擦痕が認められる。プライマリーな出土ではないが、被熱を窺わせる赤化(せっか)も見られ、本来の所属層位はⅣ層と推定されている[図1-6]。
図1-6
図1-6 鈴木遺跡 鈴木小学校地点(B地点)
上右:炉址(Ⅴ層) 上左:斧形石器出土状況 中:斧形石器 下:小形線刻礫「ビーナス」