その結果、九か所のグリッドから旧石器時代の所産と考えられる遺物として、ナイフ形石器七点、彫刻刀一点、スクレイパー一点、石核五点、叩き石一点、台石三点等を含む一三〇点が出土した。これらの石器の中には台石と叩き石を取り囲むようにナイフ形石器や彫刻刀、縦長剥片が分布する石器ユニットが認められ、石器製作址と考えられる。また後世の盛土(もりど)等の地形改変により、現状は平坦であるものの、かつては北および東に強く傾斜していたことが判明し、この付近が北東に張り出すテラス状の立地であったことが明らかとなった。
このように表土をわずかに掘り下げただけで、おびただしい遺物が良好な状態で遺存していることが確認されたことから、現地における建築工事は事前の調査が必要になるだけでなく、遺跡に著しい影響を及ぼすと考えられ、土地所有者であり事業主である農林中央金庫と協議を行った結果、予定していた新研修棟は研修所敷地の南端に建築することで合意を得ることができ、当該地における建築工事は回避された[図1-9]。
図1-9 鈴木遺跡農林中央金庫テニスコート地点