5 安田電研地点

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 石神井川谷頭部から南へ約二〇〇mの台地上に位置し、かつて縄文時代の遺物の散布が見られた部分である。正式な発掘調査報告書は刊行されていない。当該地における安田電研株式会社による工場増設に先立ち、昭和五六年六月一日から五日まで一次調査が、六月一二日から一九日まで二次調査が小平市遺跡調査会によって実施された。調査は八七五m2に及ぶ建設工事範囲に四mメッシュをかけ、一次調査ではそのうちの八グリッドを対象に掘り下げを行い、Ⅰ層、Ⅱ層を中心に精査を行って縄文時代文化層の有無が確認された。また八グリッドの内の一か所をⅩ層まで掘り下げて、旧石器時代文化層の有無が確認された。この結果を受けて、遺物が集中的に分布していたグリッドの周辺約一一二m2を二次調査としてⅢ層上面まで掘り下げて、遺構、遺物の有無が確認された。
 調査の結果、遺構等は確認できなかったものの、縄文時代の所産として縄文土器一一〇点、石斧一点、石鏃一点、スタンプ形石器一点、礫四六点ほか多数が出土した。このほか古代の土師器(はじき)片三点、近世以降の陶器片一一点が出土している。このうち縄文土器は単節(たんせつ)縄文を原体(げんたい)とするものおよび無文土器(むもんどき)がまとまって見られ、中には接合可能な資料も見られた。こうしたことから、集落そのものではないものの、比較的近い位置にその存在の可能性が窺われる[図1-11]
図1-11
図1-11 鈴木遺跡安田電研地点