予備調査の結果から、当初の計画通り北側四分の一の範囲において本調査を実施することとなり、予備調査に引き続き平成八年一〇月一七日から一二月三日まで、原因者の費用負担のもと、小平市遺跡調査会によって本調査が実施された。調査は折り返し部分を含めた道路築造範囲四二一・七m
2を、下水管の埋設深度に合わせてⅣ層上位からⅤ層まで、一部土層確認のためⅩ層まで掘り下げた。その結果、Ⅰ層とⅡ層ではやや散漫な石器と礫の集中部と、土器片が一三点出土したほか、石鏃とナイフ形石器がそれぞれ一点単独で出土した。Ⅲ層では細石刃四点を含む石器ユニット一基のほか、礫と剥片類からなる石器ユニットが二基認められた。特記すべき資料は、Ⅱ層から発見された良質の頁岩製の石鏃である。長さ三・三mm、幅一・八mm、厚さ〇・五mmと縦長で、基部は平基、弱い返しをもつ端正な形状で、全面に規則的な二次調整が及び、両側縁は鋸歯状(きょしじょう)を呈する。鈴木遺跡はじめ周辺での類例は見られないが、同様の製品が新潟県や山形県の縄文時代草創期の遺跡から出土しており、中でも山形県日向洞窟(ひなたどうくつ)遺跡西地区出土の製品は、長さ五・五mmとサイズは異なるもののほぼ同一の形状を呈するもので、Ⅱ層からⅢ層にわたって出土する土器片の存在と合わせて、注目に値する[図1-21]。
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図1-21 鈴木遺跡回田325番地地点 |