図1-26 鈴木遺跡出土の「烏犀圓」銘合子 |
第一に採り挙げるのは、上面中央に「烏犀圓(うさいえん)」と記された磁器の合子(ごうす)〔蓋(ふた)のついた小型の容器〕の蓋で、鈴木遺跡からは二点が出土している。大名屋敷跡など東京都心部における調査では全部で三点確認されているが、他遺跡の事例はいずれも一点ずつの出土で、一遺跡から二点出土している遺跡は今のところ東京では他に存在しない。なお、鈴木遺跡からはこのほか身と思われるものが二点出土しているが、蓋と身は直接対応するものではない。
列島における出土の様相を見ると[図1-27]、主に九州北部や中国地方で出土するが、遠く離れた江戸及びその近郊地域で出土し、その中間に当たる地域では今のところ確認されていないこと、膨大(ぼうだい)な資料が蓄積されてきている江戸の主要部でもわずかな数の出土であるにもかかわらず、その郊外の農村地帯であった多摩地域の、その中でも新田村落の連なっていた小平の地から二点が検出されていることは興味深い。
図1-27 「烏犀圓」銘合子蓋の主な出土地点 |