②他地域の類例

138 ~ 139 / 881ページ
八王子市宇津木台遺跡D地区出土資料
 口径八・三cm、底径三・一cm、器高四・七cmで、鈴木遺跡例などと同一の法量をもつ丸碗である。「完納賞」の銘は、見込みに円形の消印状に染め付けられているが、上の行は「納税」ではなく「税」に、中央の行も両側に「完納」、中央に丸内に「賞」の文字が入れられたものが配されて「完納賞」をあらわしている。下の行は「小宮町」となっている。小宮町は明治二二年成立の小宮村が昭和九年の町制施行により誕生し、昭和一六年には八王子市と合併していることから、この約七年間に位置づけられる。

青梅市新町の大井戸出土資料
 東京都指定史跡新町の大井戸は、慶長一六年に始まる開発に伴って設けられたわが国でも最大規模の井戸跡であるが、史跡整備事業として発掘調査が行われた際に最上層から完納賞碗が出土した。法量は口径八・三cm、底径二・八cm、器高四・九cmで、鈴木遺跡例などとは法量に若干の差異が見られる。見込みの銘は右横書きで「完納表彰・霞村」の文字が円環状(えんかんじょう)に染め付けられている。糸底には「松泉」の文字が縦書きに染め付けられている。この霞村は出土地である現在の新町を含め、青梅市東部に存在した村で、明治二二年に村制が施行されて誕生し、昭和二六年に青梅市に合併するまで存続している。