また、これまでにすぐれた聞書き集も編まれてきている。『小平ちょっと昔』(小平民話の会編、小平郷土研究会刊)、『小平ふるさと物語』(小平郷土研究会小平ふるさと物語部会)や『ききがき そのときの小平では』(小平ききがきの会)などがあげられる。さらに『ききがき 小川四番の女たち』という地域を特定したシリーズでの記録も二冊刊行されている。これらは現在、手軽に入手できるものではないのだが、今では聞くことが困難な話が数多く収録されており、またひとつひとつの事象についてこまやかな聞書きがなされており、貴重な生活資料である。これらについては巻末の参考文献の項に列記しているので、興味をおもちの方は、ぜひ小平市の図書館などで手に取っていただきたい。以下の本稿においても、多くを参考にさせていただき、場合によっては引用させていただいている。
さて、今回刊行される全三巻の『小平市史』は、いわゆる自治体史としては、前掲の『小平町誌』の続編としての性格をもつ。『小平町誌』が刊行されて半世紀が経ち、小平も町から市に変わり、装いもあらたに刊行された全三巻の自治体史ということになるのだが、この間の五十年は小平の地域にとって大きな変化の時代であった。
元来、自治体史の「民俗編」とは、その土地でどのように伝承文化が受けつがれ、それがどのような性格をもつものかということを中心に記述がなされることが多かった。その意味では、半世紀前の『小平町誌』の時代では調査し確認し得たことが、現在では困難になっている事柄もまた多い。しかしそれはまた、この五十年間の地域の変化、換言すれば小平という江戸時代の新田集落地帯にとって「都市化」とは何であったのか、「住宅化」とはどんな意味をもつものなのかということを、旧来の伝承文化の変容を探りつつも、目配りしていかなければならないことを意味している。
図1-2
関東大震災の折「東京の人が、この通りを。焼き出されが絶えなかった。焼け出されがみんな風呂敷しょって、素足ですよ。」(『小平ちょっと昔』より。仲町 大正3年生 女性)「復員して青梅街道の駅に降りて、こりゃ時代をまちがえたんじゃないかと思いました。ケヤキが両側からうっそうと生いしげって緑のトンネルがそのままあったんです。」(小川町 大正10年生まれ 男性)。市民の様々な記憶が刻まれている青梅街道 小川町(2012.4)
図1-3
草におおわれ取り壊しを待つ住宅のむこうに新しいマンションが建設されていく 花小金井(2011.11)
表1-1 小平の人口推移 | |||||
年 | 世帯数 | 総人口 | 年 | 世帯数 | 総人口 |
大正 9年 | 967 | 6,068 | 51年 | 53,604 | 150,063 |
14年 | 979 | 6,054 | 52年 | 53,951 | 150,963 |
昭和 5年 | 1,055 | 6,558 | 53年 | 54,813 | 152,402 |
10年 | 1,128 | 7,041 | 54年 | 54,657 | 151,761 |
15年 | 1,325 | 8,674 | 55年 | 54,541 | 150,411 |
19年 | 1,895 | 15,595 | 56年 | 54,228 | 149,229 |
20年 | 2,270 | 14,380 | 57年 | 54,482 | 149,302 |
21年 | 2,740 | 13,557 | 58年 | 54,790 | 149,930 |
22年 | 3,028 | 15,802 | 59年 | 56,111 | 151,890 |
23年 | 3,506 | 17,233 | 60年 | 56,940 | 153,118 |
24年 | 3,757 | 19,291 | 61年 | 57,752 | 154,347 |
25年 | 4,073 | 21,378 | 62年 | 58,497 | 155,320 |
26年 | 4,471 | 22,314 | 63年 | 58,614 | 154,959 |
27年 | 4,459 | 24,166 | 64年 | 59,718 | 155,973 |
28年 | 4,459 | 23,386 | 平成 2年 | 61,227 | 157,446 |
29年 | 4,902 | 25,108 | 3年 | 62,651 | 159,182 |
30年 | 5,517 | 27,398 | 4年 | 64,539 | 161,463 |
31年 | 5,967 | 29,433 | 5年 | 66,124 | 163,603 |
32年 | 6,726 | 32,520 | 6年 | 66,870 | 164,264 |
33年 | 7,583 | 36,091 | 7年 | 67,475 | 165,177 |
34年 | 8,968 | 40,844 | 8年 | 68,680 | 167,045 |
35年 | 10,435 | 45,992 | 9年 | 69,634 | 168,408 |
36年 | 14,499 | 51,754 | 10年 | 70,304 | 168,714 |
37年 | 17,849 | 59,926 | 11年 | 71,826 | 171,021 |
38年 | 22,944 | 72,156 | 12年 | 72,772 | 171,914 |
39年 | 26,576 | 82,682 | 13年 | 73,812 | 172,782 |
40年 | 31,601 | 92,130 | 14年 | 75,053 | 174,333 |
41年 | 37,433 | 107,015 | 15年 | 76,102 | 175,599 |
42年 | 39,698 | 112,501 | 16年 | 76,729 | 175,879 |
43年 | 42,640 | 120,329 | 17年 | 77,305 | 176,486 |
44年 | 44,664 | 125,135 | 18年 | 78,142 | 176,773 |
45年 | 46,679 | 130,780 | 19年 | 79,007 | 177,532 |
46年 | 48,664 | 134,378 | 20年 | 80,182 | 178,654 |
47年 | 49,324 | 137,270 | 21年 | 81,173 | 179,269 |
48年 | 50,130 | 140,930 | 22年 | 81,619 | 179,717 |
49年 | 51,627 | 144,985 | 23年 | 81,747 | 179,728 |
50年 | 52,989 | 148,200 | 24年 | 82,330 | 180,314 |
昭和19~27年 食糧配給台帳人口(各年1月1日現在) 昭和28~42年 住民登録人口(各年1月1日現在) 昭和43~ 住民基本台帳人口(各年1月1日現在)より |