丸ポスト

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 小平市のシンボルとしてしばしば紹介されるもののひとつに郵便の赤い丸型ポストがある。これは現在普及、設置されているスチール製の角状のポスト以前に使われていたタイプのポストであり、正式名称を「郵便差出箱1号」といい、昭和二十四年から鉄製ポストとして実用化され、同四十年代に製造が打ち切られたタイプであるという。小平市は、東京都内の自治体のなかで最も多くこのタイプが残っているということで、市のシンボルのひとつになっている。市内では三十三基のこのポストが使われており(うち私設二)、使われてはいないが保存設置されているものが四基ある。市域のポストのほぼ四分の一がこのタイプであるという。
 しかしこれは、市が丸型ポストの消滅をいち早く予見し、先手を打ってこれをシンボルに選ぶべく積極的に保存の動きをおこしたということではないようである。いわば、ある時-まず平成十三年、次いで同十九年に-に消滅しつつある丸型ポストが市内に多く残っているということで、そのことを逆手にとってシンボルとして積極的に保存の動きをおこしたということであるらしい。
 ここにあらわれているのは、自治体のイメージとして印象づけられるものをつくり出していこうとする意志と、そのシンボルとは必ずしもその地域独自の文化的、歴史的な性格を強く反映したものではなく、多分に偶然性に負う形で創出されもしているという状況であろう。もとより、小平市の市章は昭和三十四年にデザインの一般公募によって制定された小平町の町章を継承しており、昭和四十三年には市の木(ケヤキ)や市の花(ツツジ)が、また平成四年には市の鳥(コゲラ)なども選定されていくのだが、おそらく平成に入るころから、自治体は全国的にみても多様なシンボルをつくり出していく傾向を強め、それは現在も続いている。さまざまな地域からの住民が増えていき、地域のイメージが拡散化していくとともに、また一面で暮らしのありように画一化もすすんでいく状況への地方自治体の対応のひとつということになろう。