「ふるさと」の確認

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 現在、小平市内のかつての農村部では、その戸数はきわめてわずかではあるが、年中行事をできる限り往時の形のままで今も行い続けている家がある。図1-31の(左)は、そうした一軒の家の盆棚の写真であるが、盆の時期、小平の歴史や慣習を伝える社会教育施設である「小平ふるさと村」でも、移築された農家の一室に、ほぼこれと同じ飾り棚を、盆の時期に小平の民俗を示すものとして展示している(同図(右))。この盆行事のみでなく、「小平ふるさと村」においては、小平のかつての様々な習俗を折にふれて再現し、見学者に伝えている(表1-4)。
図1-31図1-31
図1-31
(左)盆棚。上水本町(2009.8) (右)小平ふるさと村の展示(2011.8)

表1-4 小平ふるさと村の主要な行事や催し(平成23年のもの)
催し(期間)内容
1あぼひぼ飾りの展示(10日間)あぼひぼとは、粟の穂、稗の穂の意味ではないかと言われており、ニワトコの木などを穂に見立てて豊作を願う。
まゆ玉飾りの展示(9日間)正月の14日・15日には、よいマユがたくさんできるようにと願い、米の粉でマユの形のだんごを作り、カシの木などにみかんなどといっしょにさして飾る。
エベスコ(恵比寿講)飾りの展示(3日間)豊作・商売繁盛を願う伝統行事。
昔話とかるた・昔遊び(1日)
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日)営業日
2節分の豆まき(1日)
第4回ふるさと村寄席(1日)
ひな人形の展示(21日間)
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
3親子郷土学習(1日)ゆでまんじゅう作り。
紙芝居を楽しもう(1日)
ハーモニカの伴奏で童謡を唄(うた)う会(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
4五月人形の展示(19日間)
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
親子郷土学習 かしわもち作り(1日)
5こいのぼりと五月人形の展示(5日間・4月の続き)
端午の節句 紙のこいのぼり・かぶと作り(5日間)
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
6子どもベーゴマ大会(1日)
郷土学習・竹細工(1日)一輪挿しなどを作る。
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
七夕飾り(9日間)短冊に願いごとを書いて大きな竹に飾る。
7日本叙情歌を奏でる演奏(1日)弦楽四重奏で野口雨情の童謡など日本の叙情歌を演奏。
子ども将棋教室(1日)
盆棚飾り(3日間)木の枠で盆棚を作り、笹とほおずきを飾り、畑で取れた作物を供える。
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
8夏休み子ども郷土学習 ブンブンごま作りほか(1日)
紙芝居を楽しむ(1日)
小平糧うどん(土・日)営業日
小平産ブルーベリーを販売(40日間)
9第18回 秋の虫の音を楽しむ会(1日)第18回 秋の虫の音を楽しむ会
紙芝居を楽しもう(1日)
郷土学習 粉食文化を学ぶ、手打ちうどん作り(1日)
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
10十三夜飾りの展示(4日間)すすきを飾り、だんごや秋の収穫物を供える。
和楽器による演奏会(1日)小平市三曲協会による演奏。
おかまさまの展示(8日間)かまどの神様の行事として、だんごを供える。
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
11昭和30年代の小平地域の結婚式(1日)自宅で行っていた当時の結婚式を後世に残す目的で、公募した市民の協力により、実際の結婚式を再現、公開。
亥の子のぼたもちの展示(5日間)亥の神と呼ばれる田の神、畑の神が一年の収穫を終えて帰る日に神々をねぎらう伝統行事の展示。
麦まき日待ち秋のまつり(1日)水車を使った製粉作業、手打ちうどんの実演・試食、鈴木ばやしの演奏、紙芝居の実演ほか。
エベスコ(恵比寿講)飾りの展示(3日間)豊作・商売繁盛を願う伝統行事の展示。
小平糧うどん(土・日・祝)営業日
12子ども郷土学習(たこ・羽子板作り)(1日)正月の遊び、たこや羽子板作り。
ふるさと村に飾る鏡もちなどを作ります。(1日)もちつき(体験参加)
紙芝居を楽しもう(1日)
小平糧うどん(土・日)営業日

 小平市域の氏神様の祭りでは、その境内や境内への道すじに、図1-32(右)のような地口行灯(じぐちあんどん)をかかげることが多い。一方、小平市民文化会館(平成五年完成、通称「ルネこだいら」)では、新作地口作品展としてその展示会を行っている。これは平成二十三年で四回目となる。かつての習俗が、従来の性格とは違う形でとりこまれ存続していく姿がそこにある。そしてまた一方で、小平市立図書館では一月中旬に、全国地方新聞の元旦号を八十種ほど集めてテーブルに置き、自由に閲覧できるようにしている。この催しは、図書館で行う前は公民館で行われており、三十年以上続いているという(図1-33)。
図1-32図1-32
図1-32
(左)ルネこだいらの地口行灯(2010.10)本文参照 (右)武蔵野神社の春祭りの地口行灯(2010.4.2)

図1-33
図1-33
小平中央図書館における「ふるさとの新聞 元旦号展」(2011.1)本文参照

 市の人口の八割以上が他からの転入者である現在、しかしその転入者も古い家ではすでに三世代が小平に住み続け、この地がいわば新たなふるさととして認識もされている現在、市のよりどころとなるイメージとしてのシンボル創出は試行を続けている。それと並行するかのように、「民俗」というカテゴリーでとらえられていた習俗のあるものは拡散して差異が薄まり、またその受け皿を変え、同時に意味も変わり、あるものは個々の家のなかでその家にとってごく自然なものとして存在してもいる。