表2-11-1 つきあいの項目別軒数と出費(表2-1と同資料より作成) | ||||
※出費先とのかかわりは聞書きによる ※かかわりのある54軒のうち重複があるため正味の計は52軒となる | ||||
内容 | 件数 | 出金先の軒数 | 出費先との関わり | 金額 |
祝い事 | 18件 | 11軒 | 親戚4軒、仲人1軒、隣組2軒、神社3件など | 22円26銭 |
不祝儀 | 20件 | 10軒 | 親戚4軒、隣組1軒他 | 85円93銭 |
見舞い | 6件 | 4軒 | 親戚2軒、多分雇い人1人他 | 11円70銭 |
寄付・共同出資 | 7件 | 7軒 | 共同出資3件、組合共同出資金他 | 24円15銭 |
出征、除隊等 | 6件 | 6軒 | 親戚4軒、むらの等級割1件他 | 15円51銭 |
小遣い・土産等 | 29件 | 16軒 | 19円70銭 | |
小計 | 86件 | 54軒 | 179円25銭 | |
親類の地代の肩代わり | 1軒 | 150円 | ||
合計 | 86件 | 55軒 | 329円25銭 |
同家のつきあい関係を表2-11-1に示したが、むらうち、親類などの慣習的なつきあいでかかわる件数は、この年八十六件。それらを大別すると、祝儀十八件、不祝儀二十件、見舞い六件、寄付、共同出資が七件、出征-入営・除隊関係六件、小遣いや土産が二十九件となる。そのつきあいでかかわりのあった家の実際の軒数はこの年、五十五軒であった。こうしたつきあいの出費の合計は三百二十九円二十五銭になる。
つきあいの費目のなかの祝儀、不祝儀の出費の割合を比べてみると、祝儀よりも不祝儀に出される額が多く、これはむらうちでのつきあいの出費の総額百七十九円二十五銭の約半分弱を占めている。祝儀不祝儀でかかわる家々は、親戚や隣組、また仲人などを務めてもらった家などで、この年、十八軒となっている(表2-11-2)。
表2-11-2 つきあいにかかわる家と出費(前表に同じ) | |||||
祝儀の部 | |||||
月 | 日 | 項目名 | 家 | 記録者とのつながり他 | 金額 |
1 | 12 | 年玉 | D家 | 記録者の弟 | 50銭 |
1 | 13 | 出産見舞 | K家 | 家の前の飲み屋の家 | 1円 |
1 | 30 | 祝儀 | L家 | 記録者の妻の実家 | 1円17銭 |
4 | 14 | 祝儀 アイロン | 同上 | 同上 | 2円 |
4 | 16 | 祝儀 | 同上 | 同上 | 1円 |
2 | 15 | 出産祝い | M家 | 2円 | |
2 | 23 | 雛代 祝い | N家 | 大沼田を開いた家の分家で記録者の仲人 | 1円 |
12 | 17 | 羽子板送る | 同上 | 同上 | 1円30銭 |
2 | 23 | 雛代 祝い | O家 | 2円30銭 | |
2 | 23 | 昼食代 | 同上 | 10銭 | |
4 | 16 | 祝儀 | P家 | 近隣の家 | 2円 |
4 | 16 | 祝儀 | Q家 | 記録者の妻の実家の親戚 | 1円 |
7 | 29 | 出産見舞 | R家 | 1円 | |
10 | 16 | 出産 | S家 | 3円 | |
2 | 27 | 神社春祭 | 神社 | 神社 | 24銭 |
9 | 16 | 祭礼の奉納金 | 神社 | 神社 | 1円 |
9 | 16 | 祭礼費用 | 神社 | 神社 | 65銭 |
祝い金の出費総額 | 21円26銭 | ||||
不祝儀の部 | |||||
月 | 日 | 項目名 | 家 | 記録者とのつながり他 | 金額 |
2 | 6 | 香料 | A家 | 記録者の次女の連合いの葬儀 | 30円 |
2 | 6 | 葬儀 造花 | 同上 | 同上の造花の代 | 3円30銭 |
2 | 6 | 仏前へ | 同上 | 同上の仏前の供え物代 | 1円20銭 |
3 | 12 | 仏前へ | 同上 | 同上の三十五日の御仏前の供へ | 2円 |
3 | 12 | 塔婆料 | 同上 | 同上の塔婆料に出す | 1円 |
2 | 15 | 香料 | B家 | 記録者の妻の妹の連合いの葬儀 | 2円 |
3 | 14 | 香料 | C家 | 近隣の家の葬儀 | 1円 |
3 | 15 | 念仏 | 同上 | 同上の念仏に行く時持参 | 30銭 |
3 | 21 | 三回忌 法要 | D家 | 記録者の兄弟の三回忌 | 3円 |
3 | 21 | 卒塔婆 | 同上 | 同上の時の塔婆 | 1円 |
9 | 26 | 墓参 | 同上 | 同上の墓参に出す | 1円 |
4 | 20 | 香料 | E家 | 知り合いの家の娘の葬儀・線香箱 | 2円 |
5 | 16 | 塔婆料 | F家 | 塔婆料 | 1円 |
7 | 31 | 盆礼 | G家 | 盆礼に出す | 63銭 |
8 | 5 | 香料 | H家 | 分家に出た記録者の弟の葬儀 | 30円 |
8 | 6 | つきあい | 同上 | 同上の忌明に出す | 2円 |
8 | 10 | 墓参り | 同上 | 同上の十七日に付墓参りに出す | 50銭 |
10 | 28 | 香料 | I家 | 田無町の家の葬儀 | 2円 |
12 | 14 | 香料 | 同上 | 同上の忌明香料 | 1円 |
3 | 11 | 寄付 | D家 | 死亡につき寄付に出す | 1円 |
不祝儀への出費総額 | 85円93銭 |
表2-11-2にある不祝儀の項にあるA家は、記録者の次女が嫁いだ高円寺の家のことで、その次女のつれあいが結核で死亡したため二月六日に葬儀に出した香料である。A家への香料の額は三十円。当時としては高額である。それに同日葬儀のための造花に三円三十銭、仏前の供え代に一円二十銭、合計三十四円五十銭を出している。娘のつれあいの死ということで、今後の暮らしの助けの意味も含まれた香料の額であろう。その三十五日の追善が三月十二日にあり、仏前に二円を供え塔婆料一円を出している。彼の亡くなる前の一月二十一日には菓子折りを持って病気見舞いをしている。そして五月十六日にはそのA家への塔婆料の出費があるが、これは記録者の次女の、三歳で亡くなった子ども(男の子)の塔婆料である。
もう一軒H家にも八月五日に三十円という高額な香料を払っている。やはり記録者とは近いつながりの家で、記録者の家から分家した弟の葬儀に出された香料である。その葬儀に続いて次の日は忌明けに二円、十七日の墓参りに五十銭出している。また、同じく表にあるD家は、千駄ヶ谷の記録者の弟の家で、その弟の三回忌、三月二十一日には法要、塔婆、九月の墓参りにも出かけ、丁寧なつきあいがなされている様がうかがわれる。この弟は前述したが記録者の良い将棋相手であったという。このほかにこの年の不祝儀に関しては記録者の妻の妹のつれあいが亡くなったり、また義理を欠かせない近隣の家や田無の家の葬儀、忌明け、そして小平村長の義理の父親の葬儀などがあった。こうした不祝儀の出費の総計は祝儀の出費の四倍の額になっている。
続いて祝い事の項目をみていくと、春と秋の神社の祭礼には三件、出産祝いが四件、雛祝いが四件、そして年玉が一件あった。その祝い事の出費の総額は二十一円二十六銭である。表2-11-2にあるL家は記録者の妻の実家で、一月三十日に祝儀代としてお金とお祝いの品物で一円十七銭を出費している。四月十六日にはその家の結婚した嫁への祝いにアイロン代を出している。またN家へは女の子への祝いに二月に羽子板と雛代を出している。この家は大沼田新田を拓いた家の分家で、記録者の仲人をした家になる。合計二円三十銭を出費している。また、組合の共同出資金二回分(十七円四十四銭)や寄付金や消防費などがある。これは計二十四円十五銭の出費で、多いのは組合の出資金である。その組合とは何の組合かは不明であるが、家計の主軸であった養蚕の組合かもしれない。その他に小川中央公会堂の落成式に一円、第二学校へ暖房その他の費用で八十銭を寄付している。一月九日の入営の餞別は調布、深大寺の親類へのもので、記録者の父親の妹の嫁ぎ先の息子の軍部入営に際してのものだという。また除隊祝いも記録者の娘のつれあいの弟など親戚筋への祝い金である。
表2-12 祝い事による入金(表2-1と同資料より作成) | ||||
14軒から頂きもの | ||||
項目 | もらった先 | 摘要 | 月 / 日 | |
御樽代 | T家 | お樽代 | 2円 | 4 / 18 |
P家(近隣) | お樽代 | 10円 | 4 / 18 | |
Q家(親戚) | お樽代 | 2円 | 4 / 18 | |
L家(親戚) | 二度のお樽代 | 2円 | 4 / 16. 18 | |
その他4件 | 祝儀に | 3円 + 5円 + 1円 + 1円 | 4 / 18 | |
(お樽代小計) | 26円 | |||
出産見舞い | Q家(親戚) | 出産見舞い | 2円 + 帽子 | 9 / 7 |
U家 | 出産見舞い | 袖なし | 9 / 7 | |
N家(仲人) | 出産見舞い | 1円 | 9 / 13 | |
V家 | 紐解き祝い | 5円 | 9 / 13 | |
W家 | 紐解き祝い | 10円 | 9 / 13 | |
P家(近隣) | 祝い | 反物1反2尺 | 9 / 15 | |
X家 | 祝ひ | 2円 | 9 / 27 | |
W家 | 出産祝い | 5円 + 鰹節 | 9 / 27 | |
L家(親戚) | 出産見舞い | 1円 | 9 / 28 | |
Z家 | 出産見舞い | 1円 | 9 / 28 | |
P家(近隣) | 出産見舞い | 1円 + 志良賀 + 鰹節 | 9 / 28 | |
(出産見舞小計) 28円 + 帽子 + 袖なし + 反物1反2尺 + 鰹節2ケ + 志良賀 | ||||
弓ハマ代 | P家(近隣) | 弓ハマ代 | 1円 | 12 / 21 |
祝儀代入金額総計 55円 + 物品 |
一方、同家が貰ったつきあい関係の入金項目を拾ってみると、この年、十七軒の家から祝いの金品が届いている。その祝い事の内訳は、春の祝儀には八軒の家から祝いが届き、秋の出産見舞い(祝い)、紐解き祝いには十一軒の家から金品が届いている(表2-12)。祝儀のお金の額が最も多いのは、となり組のある家からお樽代として届けられた十円という額になる。同人からは秋の出産見舞いにも一円と志良賀(しらが)と鰹節が届けられている。そして九月二十七日には「出産につき中嶌より祝いにもらう。外に鰹節とも」との記述があって、出産祝いに五円のお祝い金に鰹節が添えてあった。祝い事に鰹節はつきものであった。鰹節は料理に使う以外に祝いの時に添えて出すものとして準備された。前述したが十月、十一月に合計十八本ほどの鰹節を買っている。結婚式の時はもちろんであるが、七つの祝いにも鰹節は付けたものである。今でも祝い事には必ず鰹節を付けるという。現在は家庭に鰹節を削る道具がない家が多いので、鰹の削ったものが贈られる。九月には記録者の長男の嫁が三番目の子供を産み、紐解き祝いにはその嫁の実家からは十円が届けられている。縁の近いところからの祝いの金品の額は高いといえよう。
そうした金品は、祝儀で計二十六円、出産見舞いや紐解き祝い金として二十八円、それと帽子、袖無し、反物が一反二尺、鰹節二個に志良賀を受け取っている。受けとったお祝い金の合計は五十五円になっている。年間通しての親類間の祝儀、不祝儀などの出費の比率の高さがわかる。