生産生活用具

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 これらについても詳細は第四章に述べるためここでは概略のみにとどめる。生産用具・修理代・手間賃などの出費総額は九十九円十四銭である。その内容を大きく分類すると、鍬類、切截具(せっさいぐ)、容器運搬具、梱包用具、脱穀用具、煮蒸用具、住用具、そして修理などの手間賃に分けられる。鍬類は新調もし、先掛けといって修理を頼んでいる。切截具とは、鉈や剪定ばさみ、鎌などの購入である。容器運搬具は大リヤカー、空俵、灰籠や肥籠、目無籠他の籠類、桶などがある。大リヤカーは養蚕時の桑を運ぶ時によく使った。
 特記したいのは前にもふれた容器運搬具である空俵と梱包用具である縄類である。空俵は百二十俵を、一俵七銭程で補充購入している。それらはすべて出荷用である。そして出荷用の俵やカマスの梱包、大根干しのハズシ縄などに必要だったのがワラ縄である。また草屋根を葺く際にもワラ縄は欠かせない。しなやかで細工のしやすい糯ワラを使って縄になうが、同家は持ち田の稲わらで準備できた。そして脱穀機を十一円十四銭で購入している。
 住用具関係では、家の障子やコヲルタの名前が出てくる。コヲルタはコールタールのことである。これは防腐剤として用い、田無の大和屋に買いに行ったという。一缶と一升購入している。金額から類推すると約七、八升ほど買っている。これは下肥の桶に塗り、小屋にも塗った。同家には豚小屋もあった。五月に七十坪の塗り賃とあって、人に頼んで塗って貰っている。トタンも小屋の屋根に用いるのか購入している。