このカワの周辺に独特の呼び方をする空間がある。街道の南側にある家々では、カワの南側の空間を「たから」と呼び、カワの南側の土手の道は「たからみち」と称し、そのカワにかけた小橋を「たから橋」と土地の人は名付けている。「たから」の敷地に住む人の名前が例えば鉄五郎であれば、「たからの鉄っつぁん」と呼びならわし、「たから」にある農家が構えた文具、パン、雑貨を売る店の名前は「たからや」で、その店の女主人は「たからやのバア」で通っていた。一方街道の北側の集落の場合は、『ききがき 小川四番の女たち 2』によれば、カワの北側の空間を「たから」といい、農作業場になっていて、その「たから」空間の、隣家との出入口、および畑との境を東西に走る農道も「たからみち」と呼んでいる。この「たから」という呼称は小川町から仲町の間の農家では聞くことできた。
カワは、かつては一年二回、今は一年に一回、五月頃、ヌマアゲ-沼さらい-を行う。カワかがりの家が出てカワの泥やごみを揚げて掃除する。事前に玉川上水の羽村の堰を一週間位止めるのだが、そうすると水がなくなりカワで小魚があふれるほど獲れたといい、その魚とりは子どもたちの楽しみでもあった。ヌマアゲが終わると組ごとに集まり、うどんを打って食べるのが習いであった。
図3-8-2 図3-8-1の草葺き民家の母屋間取り図をもとに加筆作成。 囲炉裏が土間にある |