曳き家

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 かつては、住まいとなる居宅や作業小屋、納屋などの建物を新築する以外に中古の建物を買いとって、建物自体をまるごと曳いて移動した。それを曳(ひ)き家(いえ)といった。特に屋敷内の作業小屋などの建物の移動は多くは曳き家で行われていた。この曳き家の職人が小平の小川三叉路の近くにいて、屋号「ヒキイエヤ」といった。曳き家は、まず曳く家の柱が歪まないように柱は皆レールに固定し、その下には丸太のコロを敷いて転がしながら建物を曳いたという。曳き家は屋敷内の移動が多かったのだが、なかには母屋や蔵ごと、ほかの屋敷に街道を曳いていくという大がかりな曳き家もあった。次の項に紹介する回田の草葺きの旧宅は小金井から曳き家したという伝承があり、また後述する青梅街道沿いの小川のある家の納屋は小川分水の取水口付けかえ時(文化時代)茶屋だったものを開削後曳き家され、また同じくこの家の蔵は今から三代前が嫁入り道具のひとつとして実家から曳き家してもってきたという。
図3-9
図3-9
棟上げ 小川町 個人所蔵(年月不明)