小平の草葺きの民家で、イロリを切っている場所についてみると三つのタイプがあるようだ。ひとつはドマに掘ってあるイロリで、畑仕事から戻ると土足のまま焚火にあたって暖がとれるようになっている例、次はシタザシキと称される板間に切ってある例、そしてもうひとつはカッテの板間に切ってある例である。聞き書きではこれらの新旧は不明だが、小川の大正十年(一九二一)生まれの男性の話では、かつてのイロリはドマに掘った家が多かったという。『小平町誌』によると江戸時代中期以降の時代のザシキと称される空間は、家のなかで一番広い板間の空間で、住まいの中心であり、そこにイロリが切ってあったとある。昭和年代の草葺き民家のイロリのあるカッテ空間と同じ性格を持っており、聞書きで出てくるザシキとはその空間の性格が違う。江戸時代のザシキとは、家のなかで一番広い空間で、住まいの中心であったものをいっている。後述するシタザシキという呼称の板間にイロリが切ってあった小川町の家は古い様式を残していたのかもしれない。
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図3-10 イロリの間 飯山達雄氏撮影・寄贈 小平市立図書館所蔵(1957年頃) |