普段の食事

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 かつての農家における一日の食事の回数は、朝、昼前のお茶(朝十時頃のお茶)、昼、午後三時頃のお茶、それに夕食で、お茶を入れると五回の食事だったという。特に冬場の労働はのどが渇くため一日に二回のお茶は欠かさなかった。日常の食生活でまず語られるのは麦ご飯と漬物(沢庵)である。麦ご飯はパサパサしているので、押し麦に少しの陸稲や、糯黍(もちきび)、糯粟(もちあわ)を混ぜると粘りがでたし、麦に細切りにしたうどんを加えてドジョウご飯にすると、ねっとりして美味しかった。飽きないようにいろいろなものを入れて炊いたものである。また、飯量を増やすため大根菜を入れて炊くこともした。かなり大きな農家でも日常のご飯は麦であって、白米が普通に食卓に上るようになったのは昭和四十年頃からであったという。お米は玄米を水車のある家で精米してもらい白米にした。
図4-15
図4-15
ヘッツイでご飯炊き 飯山達雄氏撮影・寄贈 小平市立図書館所蔵(1957年頃)

図4-16
図4-16
畑仕事の合間の昼ご飯(同上)

図4-17
図4-17
ちゃぶ台で食事。大人の女性は着物の上から白の割烹着を羽織っている 小川町 個人所蔵(1962)

図4-18
図4-18
蜜蜂の飼育箱。かつては養蜂する農家は少なくなかったという 小川町(2011.7)

 朝食は麦ご飯に味噌汁に御新香である。味噌は少なくともつくりおきが一年分はあったし、なかには十年もの、三十年ものというほど寝かせた味噌を持っている家もあった。味噌汁の具について出てくるのも多くは大根であり、漬物も沢庵である。各家で作る漬物も味噌も、家ごとに微妙に味も作り方も違っていた。普段のおかずは、その時期穫れた食材が続くことになる。主婦は昼食時間には野良仕事を二十分ほど早めに切り上げ、手早く、いかに目先を変えて家族に美味しいものを食べさせるかに、毎日頭を悩ました。手打ちうどんはモノビの食べものであったが、ある家では、きつい労働が続いた時など、手早くうどんを打って昼食にしたという。調味の基本は味噌、醤油、塩が主なもので、砂糖はあまり使わなかった。油は菜種油、ごま油、大豆油を購入し、てんぷらなどのあげものに使った。