御馳走

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 六月の入梅の頃にとった真竹の油いためは農家の上等な御馳走だった。また魚はめったに食べられなかったが、秋にサンマが豊漁になると、青梅街道を天秤棒で担いで「サンマこーい、サンマこーい」といって魚屋が売りに来た。イワシの場合は「イワシこーい、イワシこーい」である。サンマが買える家は裕福な家だったという。おかずの魚といえば塩鮭である。暮れに買ったり歳暮で貰うこともあった。カマスに入って塩の塊状態の中に塩鮭が八尾から十尾入っており、夏を通して保存できた。また、干しニシンは水に木灰を入れたなかに保存した。
図4-19左図4-19中図4-19右
図4-19 うどん作り 飯山達雄氏撮影・寄贈 小平市立図書館所蔵(1957年頃)
左 木鉢でねった小麦粉をまるめる 中 のし棒で伸ばしたものを切る 右 釜で麺をゆでる

 モノビは御馳走が食べられる日で、それについては『ききがき 小川四番の女たち2 季節の祀りと暮らし』に詳しく書かれている。表4-4を参照いただきたい。モノビに登場するものは、手打ちうどん(かてうどんという)、茹でまんじゅう、餅、団子。白米のご飯に、赤飯、お寿司、などである。いくつか特記すると、かてうどん。これは純麺(じゅんめん)といった。小麦だけで作った純な食べ物という意味である。ご飯が麦や陸稲の混ぜたものだったものに対しての言葉であろう。うどんは茹でて水で晒(さら)してつけ麺で食べる。かつては大根を「千六本」に切って茹でたものを添え、またほかに茹でた白菜、インゲン、ナス、ごま油で炒めたさつま揚げとか炒めた物を添えたが、野菜で量を増やし麺自体を大切に食べてほしいという、出す側の気持ちがそこに含まれている。冠婚葬祭時の人寄せには必ず出された御馳走である。そして結婚式の本膳の最後も必ずうどんであった。結婚式の料理を頼まれる魚屋は、まな板、包丁や材料の一切を持参しておすましや椀物をすべて作るが、本膳のうどんを打つのは互助組織の男衆だった。
 結婚式に招かれた客はそこで御馳走を食べるのだが、家で待つ子どもたちにも楽しみがあった。その親が持って帰る土産の折詰である。その中には普段は食べない蒲鉾とかキントンなどが入っていた。また自家のニワトリをつぶして食べたが、そうしたモノビは一年にかぞえるくらいの日しかなかった。