餅つきは暮れと三月に搗(つ)く。暮れは正月の餅つきで陸稲の糯に粟、モロコシを入れた。朝から夜にかけて一石(約百八十リットル)くらい搗いた。オオガマ(大羽釜)に湯をわかし、五段の角セイロに糯米を蒸し、搗いた餅はのし板で伸ばし切って角餅にした。正月の雑煮は陸稲の焼き餅を入れた。醤油味で鰹節の出汁に昆布を入れ、具は主に里いも、大根、ゴボウ、ニンジンである。餅は一回に五つも六つも食べたという。そして一部は小さく切って乾燥させてあられにした。正月の餅は水餅にして五月くらいまで十時や三時のおやつとして食べた。三月はお雛様の餅つきで、この時は赤、緑、白の三色の餅を作る。また十一月の帯解きの祝いは子どもの七歳の時に祝う家が多く、この時は紅白のニゴウダマ(一升で五個作った丸餅)三十五個を朱塗りのハンダイに入れ、赤飯、するめ、飴など、子どもも一緒にリヤカーに載せて実家に行き披露した。