農家は、作付けする畑の施肥を考える際、その畑の前の作物のことを当然考慮に入れる。トウモロコシや稲を植えた後作のさつまいもはできが良い。禾本(かほん)科植物を植えていた畑は、燐酸分とカリ分の多い土壌になっており窒素分は少ない。窒素分が豊かな土壌に作付けた禾本科の作物は穂が小さく葉のみが大きいという。前作がホウレンソウだった畑は葉を育てるために多くの窒素分を施しており、その後作に、その肥料残留のままさつまいもを植えると、茎が伸びすぎ大きな葉ばかり育ち、土中のいもは育たない。ことに換金作物として金時というさつまいもの品種は、土中の窒素分を嫌った。さつまいも主体の農業経営の時代は、その畑にはホウレンソウを作付けたことはなかった。
さつまいもを作付ける畑はあまり肥沃ではなく、むしろやせた畑の方が良いと言われる。枝豆、大豆、インゲンといった豆類も肥料分が少ない畑が良い。しかし、それは栄養分が乏しい畑という意味ではなく、土壌に施す窒素、燐酸、カリ肥料の配分の具合が問題になる。さつまいもの場合はカリ分を充分に入れる。しかし、最近は小平でさつまいもを作るのに適した畑はほとんど無いと言ってよいという。現在の農家の畑に植えられているものは、十一月であれば大根、白菜、カリフラワーなどの、さつまいも作りの土壌条件とは対極にある土づくりのものばかりが植えられているからである。現在の農家経営の面から見れば、そうした葉もの栽培の方が収益につながる。この話をうかがった回田の農家でも三十種類の野菜を作っているが、その野菜の多くが葉物である。