三種の麦の収穫

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 麦の収穫時期は天候との戦いでもある。大麦、小麦、ビール麦は少しずつ時期がずれての刈りとりになる。大麦が一番早く、麦蒔きから約半年後に刈りとりができる。大麦の収穫から一週間ほど遅れて小麦の刈りとりになる。ビール麦も作っている農家では大麦と小麦の収穫期の間にビール麦の収穫期が入る。したがって六月の半ば頃からは二、三日くらい期間をおいて大麦、ビール麦、小麦と次々と麦刈りが続くことになる。その間、刈りとり後にはそれぞれの乾燥作業が入る。
 六月の半ば頃に一番早い大麦の収穫が始まる。六月二十日頃には大麦の刈りとりを終える。その刈りとりが終わるか終わらないかのうちにビール麦の収穫時期がやってくる。大麦とビール麦を作るということは、刈りとり作業が重なる日もあってかなり無理をすることになる。ビール麦を換金物として主力に作る農家では大麦は多くは作れなかった。そのためビール麦のできの良いのは売り物にして、次にできの良いものは自家用にし、できの悪いのは豚の餌にする方法をとった。自家用として食べる分には大麦よりビール麦の方が美味しかったという。
 ビール麦の収穫がすむと、六月の末には小麦の収穫になる。小麦の刈りとり作業が最も天候との競争になる。六月末から七月にかけての小麦の刈りとりは入梅時期と重なり雨の合間をぬっての作業であった。刈りとった麦は雨にあてないように積み上げておくのだが、雨が続くと水分を吸い込み積み上げた中で芽が出ることもあったという。また小麦の葉の中に虫が発生して、積み上げた小麦の山を軽くたたくと蛾がワーッと飛びだすこともあった。これは小麦を換金物にしている家にとって致命的である。