種いもを伏せる

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 苗床作りから三日から一週間もすれば発熱し出す。その頃に、踏み込んだ落ち葉の上に一面に培養土をかける。培養土は堆肥の細かくなった状態のもので、これを十センチほどの厚さに、抑えこむようにかける。そこへ種いもを横に寝かせて並べていく。これを種いもの伏せ込みという。さつまいもには頭と尻尾があり、頭の部分に集中して何十本と発芽する。それを考慮して苗床全体に平均に芽が出るように種いもを配置していく。
 種いもを伏せ込み十日くらいたつと芽が出てくる。この時期は、毎日寒暖計を苗床に挿して温度を確認する日々になる。三十度から三十五度くらいの温度を保っていく。
 苗床作りはいわば一発勝負の作業である。苗床が発熱しなければいもの芽は出ない。苗床作りが失敗すればその年のさつまいもの作付は、できないということになる。種いもの伏せ込み時期は外せない。従ってこの間の仕事は、この年にさつまいもを栽培できるかどうかがかかった最優先の作業となる。
 種いもを伏せ込み十日ほどたって、芽が出てくれば苗床作りは成功である。ほっと一息つける時になる。ところがいつまでも芽が出ないと、伏せ込んだ種いもは腐る。苗床の熱が高すぎても低すぎても腐る。種芋の伏せ込み後は、雨や雪よけの覆いをかける。三月には雪が降ることもある。近年はビニールのトンネルで覆うが、当時は苗床の上に屋根掛けをし、それにヨシズをかけ、その上にムシロやコモをかけて保温した。