ウドの軟化ムロ作り

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 ウドの軟化に必要なものは穴蔵である。この家では明治四十年(一九〇七)に、父親の代に掘られた穴蔵がすでに一つあった。それはさつまいもの貯蔵、養蚕の桑の一時保存に使われていたが、それはそのまま軟化ムロの穴蔵としても使い、また昭和三十年代と四十年代に新しく掘った。構造はいずれも同じで地表から地下四メートルの深さのところを掘って作る。上から見ると十字形をしており、十字の一辺の長さが四メートル、幅は二メートル、穴の高さは一メートルである。地上から一二、三段の梯子をかけて上り降りした。小平では、関東ローム層が深さ十メートルほどあり、これは穴蔵を作るのに適した土質で、崩れる心配はないという。明治四十年(一九〇七)に掘った穴蔵も大正時代の関東大震災でも崩れることはなかった。軟化ムロを掘る場所の条件は固い粘土質であることで、最もよくない土質は砂利層である。水が入れば穴蔵が崩れ、空気が入って最も大事な「ウドを軟化させる」ことができない。要するに空気が入らず、太陽光線を遮断して、暗闇の中で、水を充分にやって育てること、これが軟化ウド作りの必須条件になる。