鍬でウナイ、サクリ、サッキリ

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 小平の畑の耕作はおおかたが鍬を使いすべてが人力によって行われてきた。かつて養蚕が農家経営の主軸を占めていた時代は農作業の大半が桑畑の管理で桑の木の間に生える雑草の除草作業であり、その時代の鍬の使用頻度は麦やさつまいも作りが主軸であった時代に比べると少なかったが、鍬、鎌はずっと活躍してきた。作物を作る前に土を三十センチほど深く耕すことをウナウという。さつまいもなどを掘ることもウナウという。植えた麦などの作物が倒れないように畑の土を軽く寄せることをサクルという。作物の畝を作ることをサッキリといい、作切りの意味である。サクルとサッキリはほぼ似た耕作作業になる。現在、農家で畑ウナイによく使われているのはサンボングワ(図4-37)である。農家によってはウナウだけでなく、さつまいも掘りにも使い、これ一本で畑の耕作のすべてを行う農家もある。土の硬いところを打ち起すにはシホンマンガを使い、それは主にゴボウ畑に用いる。その他にウナウ鍬にはトンガやトンビという金鍬もある。畑の土をサクって土寄せする鍬には、へラグワ・ヒラグワがある。ヒラナラシと呼ばれる鍬もある。これらは鍬先が鉄製の板状になっている。そしてマドグワという鍬先の鉄製の板状の部分に大きく穴があいた鍬もあり、その分鍬自体の重さが軽くなって土寄せには使いやすい。麦作によく使われる鍬はヒラグワである。
図4-37
図4-37
サンボングワを担いで畑仕事へ。サンボングワは、鍬のなかでは最もよく使われる 飯山達雄氏撮影・寄贈 小平市立図書館所蔵(1957年頃)

 現在の鍬は鍬先がすべて鉄製で作られている。かつては鍬の刃先の部分だけが鉄で、鍬先の台になる部分が木製で作られていた。そうした鍬は一般に風呂グワといわれ、小平ではクロクワ(図4-38)、ヒラグワがあり、使われていたのは明治の中頃までだったようで、それ以降鍬先全体が鉄製に変わっていく。

図4-38
クロクワ(小平市民具庫所蔵品より作成)