素材としてのワラと竹

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 かつての小平の農家の納屋にあった民具でよく使われたのはワラ製品と竹製品であった。小平はかつてどの農家にも竹林があり充分に自給でき、農家の生産生活において最も数量的に多いのがワラ製品であった。履物のワラゾウリ、ワラジをはじめ、さつまいもや麦などの出荷容器である俵やカマスをかなりの量必要とした。出荷用であるため大量な消耗品でもあった。そうしたワラは陸稲のワラではなく、稲ワラを水田の広がる南多摩地方の稲城や府中の農家から購入した。しかも、それは稲ワラそのものを買うのではなく、米俵やカマスといったワラ製品を買い、それを再利用したのである。再利用はそのまま運搬容器として使うのはもちろんのことだが、空の米俵やカマスをほどいてばらばらにほぐし、一本一本の稲ワラの繊維にした。これは冬場になっての子どもたちの仕事のひとつであった。そのほぐしたワラでゾウリやワラジを作り、縄をなった。こうしたワラ細工は冬場の仕事で、子どもの時から皆夜なべ仕事に作ったものである。農家にはムシロを織るムシロバタがあったが、織らなくても、カマスの縁の縫い目をほどくだけでムシロになった。また、カマスを買ってきて左右の縫い目をほどいて延ばしムシロとして使った。カマスはもともとワラムシロを二つ折りにして左右をワラで縫い閉じて袋状に作ったものであったから、米俵よりも使いでがあった。

図4-46-1
カマスの縫い目をほどいてムシロに


図4-46-2
俵をほどく

 また、カマス自体は買うよりも、中古を利用することが多かった。冬場に買う北海道産の塩鮭(塩じゃけ)もニシンもほとんどがカマスに入って送ってきており、味噌や醤油作りのための大豆は北海道産の他に千葉県産のものが入ってきており、それらはカマスに入って売っていた。

図4-47

ハッポンビネ(クズ掃き籠、堆肥用、山の落ち葉を集め入れる。リヤカーや大八車に積んで運ぶ。どこの農家でも3個以上はもっている。この籠のなかの落葉は75kgほどにもなる。この大きさの籠は、横竹が8本入っている。)小平市民具庫所蔵品より作成


図4-48
ロッポンビネ(堆肥、クズ掃き籠、背負って使う)(小平市民具庫所蔵品より作成)


図4-49
スイカカゴ、スイカ運搬用(小平市民具庫所蔵品より作成)


図4-50
ハイザル(小平市民具庫所蔵品より作成)


図4-51
六つ目平籠(小平市民具庫所蔵品より作成)