奥州っこ

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 「人さらいをした子どもじゃないと思うんだけど、子どもをね、売りにきたんですって。天びん棒でね。子どもをこう前と後ろに一人ずつのせて、「子どもー」ってね。」という証言が『小平ふるさと物語』に記されている。これは昭和三十一年生まれの女性が、その祖母からの伝聞であるという。
 昭和初期頃、東北地方では農村窮乏のため娘の身売りが行われていたことはよく知られているが、東北地方の子どもを売りに来ていた話は、小川でも花小金井でも聞いた。こうした人身の斡旋を行う者をケイアン(桂庵・慶庵)と呼ぶが、東京都内からケイアンが、小学校三、四年の子を売りにきたという。「奥州っこ」といっていた。小川のある家では二人ひきとったが、とても働かせる気持ちになれず、部屋を与えて手回し蓄音機などを買い与え、自分の子と同じように、祭りの日には小遣いを与え、兵隊検査まで面倒をみたという。そうした「奥州っこ」は、昭和初期頃に限ってのことだったらしい。